女将の言葉遣い|旅館で使う敬語とクッション言葉の例文

女将の言葉遣いを紹介する記事のアイキャッチ。旅館の客室で手をそろえる着物の手元

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旅館で働き始めたものの、『お客様の前で、とっさに正しい敬語が出てこない』と焦った経験はありませんか。女将さんのやわらかい話し方に憧れる方も多いですよね。

結論から言うと、女将の言葉遣いは、難しい敬語をたくさん覚えることより「よく使う言い回しを場面ごとに決めておくこと」で身につきます。旅館の接客で使う言葉は、実はそれほど多くないんです。

この記事では、旅館の敬語の基本と、場面ごとの言い換え前と後の例文、クッション言葉の使い方を紹介します。

目次

女将の言葉遣いで大事にされていることは?

先に結論

女将の言葉遣いで大事なのは、お客様を立てる言葉を選ぶことと、断る時や頼む時にひと言のやわらかさを足すことです。正しさと、聞いた人が感じる温度の両方を意識します。

旅館の言葉遣いに、全国共通の決まりはありません。宿の格や地域、お客様との距離感によって、ちょうどいい丁寧さは変わります。

『じゃあ、何を目安にすればいいの?』と思いますよね。まずは、次の3つの基本をおさえておけば大丈夫です。

基本どういうことか旅館での例
お客様を立てるお客様の動きに尊敬語を使う「ご覧になりますか」「お召し上がりください」
自分を控える自分や宿の動きに謙譲語を使う「お部屋までご案内いたします」「お荷物をお預かりします」
やわらげるお願いや断りの前にひと言足す「恐れ入りますが」「あいにく」

この3つがそろうと、同じ内容でも受け取る印象がぐっと変わります。女将の仕事全体の中での言葉の役割は、女将とはで紹介しています。

丁寧すぎても伝わりにくい

敬語は重ねるほど丁寧になる、と思いがちです。ただ、言葉が長くなりすぎると、お客様は何を言われたのか分かりにくくなることも。

例えば、次の2つを声に出して比べてみてください。

「大変恐縮でございますが、ご夕食のお時間につきましてお伺いさせていただいてもよろしゅうございますでしょうか」
「ご夕食は、何時ごろがよろしいでしょうか」

後の方が、お客様はすぐに答えやすいですよね。

旅館の言葉遣いは、ゆっくり、短く、はっきりが基本です。丁寧さは言葉の量より、声の調子や間で伝わる部分も大きいんです。

旅館の敬語、まず覚えたい言い換えは?

よく使う動きの言葉から覚える

旅館の接客で使う敬語は、「来る」「いる」「言う」「見る」「食べる」など、よく出てくる動きの言葉に集まっています。この言い換えを覚えるだけで、多くの場面に対応できます。

まずは、普段の言い方を、お客様に対する言い方と、自分の側の言い方に分けて並べてみました。

普段の言い方お客様の動き(尊敬語)自分や宿の動き(謙譲語)
来るお越しになる、いらっしゃる参る、伺う
いるいらっしゃるおる
言うおっしゃる申す、申し上げる
見るご覧になる拝見する
食べる、飲む召し上がるいただく
知っているご存じ存じている
待つお待ちになるお待ちする

『尊敬語と謙譲語がごちゃまぜになりそう』という声もよく聞きます。迷った時は、「動いているのはお客様か、自分か」を考えると選びやすくなりますよ。

間違えやすい言い回し

接客の言葉には、よく耳にするけれど、言い直した方が自然なものがあります。

よく聞く言い方言い直した例理由
「お召し上がりになられますか」「お召し上がりになりますか」尊敬語が重なっている
「おっしゃられました」「おっしゃいました」尊敬語が重なっている
「こちらがお部屋になります」「こちらがお部屋でございます」何かに変わるわけではない
「ご予約のほうはお済みですか」「ご予約はお済みですか」「ほう」がなくても伝わる
「受付で伺ってください」「受付でお尋ねください」伺うは自分の側の言葉
よくある失敗

丁寧にしようとして、尊敬語を2つ重ねてしまう失敗はよくあります。「お〜になる」の形にさらに「られる」をつけていないか、一度声に出して確かめてみてください。

「させていただく」が続く時

「ご案内させていただきます」「ご説明させていただきます」と、同じ形が何度も続くことがあります。間違いではありませんが、続くとくどく聞こえやすいんです。

言い換えの例

「ご案内させていただきます」は「ご案内いたします」、「お預かりさせていただきます」は「お預かりいたします」と言うと、すっきり伝わります。「させていただく」は、お客様の許しをいただいて何かをする時に取っておくと、言葉に重みが出ますよ。

場面別の言い換え:お迎え・ご案内・お断り・お詫び・お見送り

5つの場面ごとに「決まり文句」を持っておく

旅館の接客は、お迎え、ご案内、お断り、お詫び、お見送りの5つの場面に分けると、どの言葉を使えばいいかが見えやすくなります。場面ごとに言い換え前と後を比べてみましょう。

旅館の接客の言葉を、お迎え・ご案内・お断り・お詫び・お見送りの5つの場面に分けた図解

ここに載せた言い回しは一例です。自分の宿の雰囲気に合うように、少しずつ言い方を変えて使ってみてください。

お迎えの言葉

玄関やフロントで最初にかける言葉です。お客様の緊張をほどく、やわらかい言い回しを選びます。

言い換え前言い換え後
「いらっしゃいませ。予約の名前は?」「ようこそお越しくださいました。ご予約のお名前を伺ってもよろしいですか」
「荷物持ちます」「お荷物、お預かりいたしましょうか」
「ちょっと待っててください」「少々お待ちいただけますか」
「お疲れさまです」「遠いところをありがとうございます」

お客様に「お疲れさま」と声をかける宿もありますが、目上の方へのねぎらいとしては気にされる方もいます。「お疲れでございましょう」「長旅でしたね」のように言うと、やわらかく伝わります。お出迎えの流れは旅館のお出迎えとお見送りで紹介しています。

ご案内の言葉

お部屋や館内を案内する時の言葉です。お客様が次に何をすればいいか、短く伝えるのがコツです。

言い換え前言い換え後
「こっちです」「こちらへどうぞ」
「段差あります」「お足元に段差がございます。お気をつけください」
「夕飯は何時にしますか」「ご夕食のお時間は、何時ごろがよろしいでしょうか」
「わからないことあったら電話してください」「何かございましたら、お部屋のお電話でお気軽にお申し付けください」

お断りの言葉

満室やご要望に応えられない時など、断る場面は言葉選びがいちばん難しいところです。断るだけで終わらせず、代わりにできることを添えると印象が変わります。

言い換え前言い換え後
「それはできません」「申し訳ございません、あいにくそちらは承っておりません」
「もう満室です」「あいにくその日はお部屋がふさがっております。前後の日でしたらご用意できます」
「時間外なので無理です」「恐れ入りますが、そのお時間は終了しております。明朝でしたらご用意いたします」
「わかりません」「ただいま確認してまいります。少々お待ちいただけますか」

お詫びの言葉

お待たせした時や、こちらの不手際があった時の言葉です。言い訳から入らず、先にお詫びを伝えます。

言い換え前言い換え後
「すみません、忙しくて」「お待たせいたしまして、申し訳ございません」
「担当が違うので」「私が承ります。すぐに確認いたします」
「気をつけます」「ご不便をおかけいたしました。今後このようなことがないよう努めます」

お詫びが必要な場面の流れや言葉は、旅館のクレーム対応で詳しく見られます。

お見送りの言葉

出発の時の言葉は、短く気持ちをこめて伝えます。最後のひと言は、お客様の記憶に残りやすいんです。

言い換え前言い換え後
「ありがとうございました」「ご宿泊いただき、誠にありがとうございました」
「気をつけて」「どうぞお気をつけてお帰りくださいませ」
「また来てください」「またのお越しを心よりお待ちしております」

お部屋に伺う時の言葉

客室にお茶や夕食をお持ちする時は、お客様のくつろぐ場所に入ることになります。ひと声かけてから入るのが、旅館の言葉遣いの基本です。

言い換え前言い換え後
「入ります」「失礼いたします。お茶をお持ちいたしました」
「ご飯の準備しますね」「ご夕食のご用意をさせていただいてもよろしいでしょうか」
「布団敷きに来ました」「お休みのご用意に伺いました。今、よろしいでしょうか」
「じゃあ失礼します」「ごゆっくりお過ごしくださいませ。失礼いたします」

ここでの「させていただく」は、お客様のお部屋で作業をする許しをいただく場面なので、自然に聞こえます。

お客様をお呼びする時の言葉

お客様を何と呼ぶかも、言葉遣いの大事なところです。名前が分かっている時は、名字に「様」をつけてお呼びするのが一般的です。

呼ぶ相手呼び方の例
予約されたご本人「〇〇様」
一緒に来られた方「お連れ様」
お子様「お子様」、または名前を伺って「〇〇ちゃん」「〇〇くん」
団体のまとめ役の方「幹事様」
お名前が分からない時「お客様」

『お連れ様を奥様と呼んでいいの?』と迷うこともありますよね。関係を決めつけずに「お連れ様」と呼んでおくと、どなたにも失礼になりません。

クッション言葉の使い方と例文

言いにくいことの前に、ひと言を置く

クッション言葉は、お願いや断りの前に添えて、相手の受け取り方をやわらげる言葉です。旅館の言葉遣いでは、この「ひと言」がとくに大切にされています。

『クッション言葉って、どれをいつ使えばいいの?』と迷う方も多いはずです。旅館でよく使うものを、場面と合わせて並べました。

クッション言葉を、お願いやお断り、お尋ねなどの場面ごとに示した図解
クッション言葉向いている場面例文
恐れ入りますがお願いする時「恐れ入りますが、こちらにお名前をお書きいただけますか」
お手数をおかけしますが手間をとらせる時「お手数をおかけしますが、お車の鍵をお預かりできますか」
あいにく希望に応えられない時「あいにく本日は露天風呂の清掃日でございます」
差し支えなければ個人的なことを伺う時「差し支えなければ、今回のご旅行の目的を伺ってもよろしいですか」
せっかくですが申し出をお断りする時「せっかくですが、お気持ちだけありがたく頂戴いたします」
よろしければ提案する時「よろしければ、明朝のお散歩に合う道をご案内いたします」

クッション言葉を使いすぎないコツ

クッション言葉は便利ですが、毎回つけると回りくどく聞こえることもあります。使うのは、お客様に何かを頼む時と、断る時だけで十分です。

自然に聞こえる使い方
  • お願いや断りの前に1回だけ添える
  • 言ったあと、内容を短く続ける
  • 声の調子をやわらかくする
回りくどく聞こえる使い方
  • 1つの文に2つ以上重ねる
  • 前置きが長く、本題がなかなか出てこない
  • 早口で決まり文句のように言う

例えば、「大変恐れ入りますが、お手数をおかけしまして申し訳ございませんが」と重ねると、聞く方が疲れてしまいます。「恐れ入りますが」のひとつで、気持ちは十分に伝わりますよ。

方言や宿らしさは、言葉遣いに残していい?

正しい敬語に、地域の言葉を少し添える

宿の言葉遣いは、正しい敬語を土台にしながら、地域の言葉や宿らしい言い回しを少し添えると、その宿ならではの温かさになります。どこまで残すかは、宿の方針で決めて大丈夫です。

『方言で話すのは失礼かな』と気にする方もいるかもしれません。実は、地元の言葉で迎えてもらえるのを楽しみにしているお客様も少なくないんです。

ただ、方言だけで話すと、遠方のお客様に意味が伝わらないこともあります。大事な案内は標準的な言葉で伝え、あいさつや雑談に地域の言葉を混ぜる、という使い分けがしやすいですよ。

宿らしい言い回しの例

「お帰りなさいませ」と迎える宿や、夕食の時に「本日の献立をご説明させていただきます」とていねいに始める宿など、宿ごとに決まった言い回しを持っていることもあります。新しく入った人は、まず先輩がどう言っているかをよく聞いてみてください。

年配のお客様や外国人のお客様には

年配のお客様には、ゆっくり、少し大きめの声で、言葉を区切って話すと伝わりやすくなります。難しいカタカナ語は、なるべく日本語に言い換えましょう。

外国人のお客様には、敬語を重ねるより、短くはっきりした言葉の方が伝わります。「こちらです」「お風呂はこちら」のように、身ぶりを添えるのも気配りですよ。英語のひと言フレーズは女将は英語で何という?で紹介しています。

言葉遣いを身につける練習のしかた

言葉遣いは、知識として覚えるより、口に出して慣れる方が身につきやすいです。

言葉遣いを身につける手順
  1. 自分の宿で毎日使う言い回しを、場面ごとに書き出す
  2. 先輩や女将がどう言っているかを聞いて、表に書き足す
  3. 鏡の前や移動中に、声に出して練習する
  4. 間違えた言い方に気づいたら、その日のうちに言い直しを書いておく
  5. 慣れてきたら、お客様に合わせて言い回しを少し変えてみる

電話での言葉遣いは対面と少し違います。予約の電話の受け方は旅館の予約電話の受け方にまとめています。

言葉遣いを磨くうちに、旅館で働くことそのものに興味が出てきたという方もいるかもしれません。旅館やホテルの仕事を探す時は、宿泊業界の求人に詳しい相談先を使う方法もあります。

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旅館の言葉遣いのよくある相談

迷いやすいのは「よく使うのに自信がない言葉」

旅館や和食のお店で働く方から、ふだんの接客の言葉について相談が寄せられています。よく見かけるものに答えますね。

飲み物を伺う時、どう言えばいい?

和食のお店でアルバイトをしている方から、お客様に飲み物を伺う時の言い方に迷っている、という相談があります。

いちばん自然なのは、次のような言い方です。

「お飲み物はいかがなさいますか」

「何を飲まれますか」より、こちらの方がやわらかく聞こえます。おすすめを伝える時は「本日は地元のお酒もご用意しております」のように、宿やお店の側の言葉で添えると自然ですよ。

「お申し付けください」は目上の人に失礼?

「何かありましたらお申し付けください」という言い方が、目上の方に失礼にならないか、という相談もよく見かけます。

旅館では、お客様に向けて普通に使われている言い回しです。気になる場合は「何かございましたら、お気軽にお声がけください」と言い換えることもできます。

フロントの飲み物を自由に持って行ってもらう時の言い方

フロントに置いた水やコーヒーを、お客様が自由に部屋へ持って行けることを、どう伝えればいいかという相談があります。

例えば、こんな言い方ができます。

「こちらのお水とコーヒーは、ご自由にお部屋へお持ちいただけます。どうぞお召し上がりください」

お連れ様が後から着いた時、先に着いた方に何と言う?

2人で泊まる予定のお客様が別々に到着し、後から来た方をお部屋へお通しする時の言い方に迷う、という相談もあります。

先にお部屋にいらっしゃる方には、例えばこう声をかけます。

「失礼いたします。お連れ様がお着きになりました。お部屋へご案内いたしました」

後から来た方には「〇〇様がお部屋でお待ちでございます」と伝えると、どちらの方にも状況が分かりやすくなりますよ。

案内の言葉を作る時のチェック
  • お客様の動きに尊敬語を使っているか
  • 自分の側の動きに謙譲語を使っているか
  • 「ご自由に」「お気軽に」など、遠慮しなくていいことが伝わるか
  • 声に出して長すぎないか

よくある質問

女将の言葉遣いは、どうやって身につけるのですか?

多くの場合は、女将や先輩の話し方をそばで聞きながら、毎日の接客で少しずつ覚えていきます。よく使う言い回しを書き出して声に出す練習も役に立ちます。

旅館の敬語で、いちばん気をつけることは何ですか?

お客様の動きと自分の動きを取り違えないことです。お客様には尊敬語、自分や宿には謙譲語を使うと覚えておくと迷いにくくなります。

「了解しました」はお客様に使ってもいいですか?

お客様に対しては「かしこまりました」「承知いたしました」の方が丁寧に伝わります。旅館の接客では、こちらを使うのが一般的です。

旅館の言葉遣いは、ホテルと違いますか?

敬語の基本は同じです。旅館では、地域の言葉や宿らしい言い回しを添えて、家に迎えるような温かさを出すことも多いです。

クッション言葉は、毎回つけた方がいいですか?

お願いや断りの前に1回添えるくらいで十分です。重ねすぎると回りくどく聞こえるので、言いたい内容を短く続けるようにしましょう。

まとめ

この記事の要点
  • 女将の言葉遣いは、お客様を立てる・自分を控える・やわらげるの3つが基本
  • 旅館の敬語は、来る・いる・言う・見る・食べるなど、よく使う動きの言い換えから覚える
  • お迎え・ご案内・お断り・お詫び・お見送りの場面ごとに決まり文句を持っておく
  • クッション言葉は、お願いや断りの前に1回だけ添える
  • 正しい敬語を土台に、地域の言葉や宿らしい言い回しを少し添えてよい
女将ガイド

女将ガイド 編集部

旅館の女将・若女将の仕事と役割、女将になるまでの道のり、着物や立ち居振る舞い、旅館のしきたりとおもてなし、旅館・料亭で働く方法までを、やさしく整理している情報サイトです。 公式サイト

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