女将のお礼状の書き方|宿泊後に送る手紙の文例と送る時期

お礼状の書き方を紹介する記事のアイキャッチ。旅館の文机で便箋に向かう着物の手元

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お泊まりいただいたお客様にお礼状を出したいけれど、『何をどう書けば、形だけの手紙にならないんだろう』と手が止まっていませんか。毎回同じ文面になってしまう、という悩みもよく聞きます。

結論から言うと、お礼状の書き方は「季節のひと言、お礼、滞在の思い出、相手を気づかう結び」の4つの中身に、日付と名前を添えるだけで形になります。そこに、そのお客様だけのひと言を入れると、ぐっと心のこもった手紙になるんです。

この記事では、旅館のお礼状の基本の形と、お客様の種類ごとに書き出しと結びを入れ替えて使える文例を紹介します。

目次

旅館のお礼状とは?女将が手紙を書く理由

先に結論

旅館のお礼状は、お泊まりいただいたお客様に、宿からお礼の気持ちを伝える手紙です。出すかどうか、誰が書くかは宿によって違いますが、女将が書く宿も多く見られます。

旅館のお礼状に、法律の決まりや業界共通の型はありません。出す宿もあれば出さない宿もあり、はがきで送る宿、封書で送る宿などさまざまです。

『全員に出すのは大変そう…』と感じる方もいますよね。最初は、常連のお客様や記念日のお客様など、特にお礼を伝えたい方から始めてもかまいません。

女将の手紙にはどんな種類がある?

女将がお客様に出す手紙には、いくつかの種類があります。使い分けを知っておくと、どれを書けばいいか迷いにくくなります。

手紙の種類どんな時に出すか長さの目安
お礼状お泊まりいただいた後、お礼を伝えるはがきか便箋1枚ほど
一筆箋お土産や忘れ物に添える、短く気持ちを伝える数行
季節の挨拶状暑中見舞いや年賀状など、季節の便りとしてはがき1枚
お詫びの手紙滞在中にご迷惑をおかけした時便箋1〜2枚

一筆箋は、辞書のデジタル大辞泉で「短い文章を書き送るための小型の便箋」と説明されています。季節の挨拶状の時期や文例は旅館の季節の挨拶状で紹介しています。

お礼状が女将の仕事になっている理由

女将の仕事は、お客様を迎えて送るまでで終わりではありません。お帰りになった後に、もう一度宿を思い出していただくきっかけを作るのも、大事な役割なんです。

お礼状は、その代表的な方法です。女将の仕事全体の中での位置づけは、女将とはで見られます。

お礼状の書き方の基本:5つのパーツ

5つのパーツを順番に並べる

お礼状は「季節のひと言」「お礼」「滞在の思い出」「結び」「日付と名前」の5つのパーツでできています。この順番を決めておけば、毎回ゼロから考えなくてすみます。

旅館のお礼状を、季節のひと言・お礼・滞在の思い出・結び・日付と名前の5つのパーツに分けた図解

5つのパーツと、それぞれに入れる中身の例を表にしました。

パーツ入れること例文
季節のひと言今の季節や、宿の周りの様子「山の木々が色づきはじめました」
お礼お泊まりいただいたことへのお礼「先日はご宿泊いただき、誠にありがとうございました」
滞在の思い出そのお客様だけの出来事「お部屋の窓から夕焼けを喜んでくださったお姿が心に残っております」
結び相手の健康や、またの来訪を願う言葉「寒さに向かう折、どうぞご自愛くださいませ」
日付と名前書いた日と、宿名・書いた人「〇月〇日 〇〇旅館 女将 〇〇」

季節のひと言は、宿の窓から見える景色で

季節のひと言は、決まった言い回しより、宿の周りの景色を書くとその宿らしさが出ます。お客様も、泊まった時の景色を思い出しやすくなるんです。

季節季節のひと言の例
春「宿の前の川沿いに、桜のつぼみがふくらみはじめました」
夏「夕方になると、中庭にひぐらしの声が響くようになりました」
秋「朝夕の風に、秋の気配を感じるころとなりました」
冬「山の上が白くなり、湯けむりがいっそう濃く見える季節です」

ていねいな手紙らしくしたい時は、日本郵便の寒中見舞いの資料にある「厳寒の候」のような時候のあいさつを使う方法もあります。お客様との距離感に合わせて選んでみてください。

いちばん大事なのは「滞在の思い出」

5つのパーツの中で、お客様の心に残るのは「滞在の思い出」です。ここが空っぽだと、どのお客様にも同じ手紙になってしまいます。

『でも、全員のことを覚えていられない』と思いますよね。だからこそ、滞在中に気づいたことを、その日のうちに短くメモしておくのがおすすめです。

お客様のことを書き残す工夫は、女将はお客様をどう覚えている?で紹介しています。

滞在の思い出に使える話題
  • お客様が喜んでくださった料理や景色
  • 会話の中で聞いた旅の目的や、お祝いの内容
  • お子様が楽しんでいたこと
  • お天気や季節の出来事(雪の日、花の盛りなど)
  • お見送りの時にいただいたひと言

お礼状を送る時期の考え方

お礼状をいつまでに出すかに、公的な決まりはありません。宿ごとに「出発から何日以内」と決めている所もあります。

ただ、お客様の記憶が新しいうちに届いた方が、手紙の中身が伝わりやすいですよね。季節の挨拶状の時期と重なる時は、季節の便りとまとめて出す宿もあります。

季節の便りと重なる時

日本郵便の案内では、暑中見舞いは小暑(7月7日頃)から立秋の前日(8月7日頃)まで、残暑見舞いは立秋(8月8日頃)から8月末頃までとされています。夏にお泊まりのお客様には、お礼状に暑中見舞いの言葉を添える形もありますよ。

手書きと印刷、どちらがいい?

お礼状を手書きにするか印刷にするかも、よく迷うところです。

手書きのよさ
  • 宿や女将の気持ちが伝わりやすい
  • そのお客様だけのひと言を自然に書ける
  • 字の上手下手より、ていねいさが伝わる
手書きで気をつけること
  • 時間がかかるので、出す人数を絞る必要が出る
  • 書き間違えた時に書き直しが必要になる
  • 忙しい時期に遅れがちになる

全部を手書きにしなくても大丈夫です。本文は印刷にして、最後のひと言と名前だけ手で書き添える、というやり方もあります。

お客様の種類別:書き出しと結びの文例

4種類のお客様で、書き出しと結びを入れ替える

お礼状は、お客様を「初めてのお客様」「常連のお客様」「記念日のお客様」「団体の幹事様」の4種類に分けると、文面を作りやすくなります。書き出しと結びだけを入れ替えれば、真ん中の思い出の部分に集中できます。

旅館のお礼状を、初めて・常連・記念日・団体の幹事様の4種類のお客様に分けて書き出しと結びを示した図解

まずは、4種類のお客様ごとの書き出しと結びを並べてみました。

お客様書き出しの例結びの例
初めてのお客様「このたびは数ある宿の中から当館をお選びいただき、ありがとうございました」「またいつか、この町を訪れていただける日を心待ちにしております」
常連のお客様「いつも変わらずお越しいただき、心より感謝申し上げます」「次の季節にも、お元気なお顔を拝見できますことを楽しみにしております」
記念日のお客様「このたびは大切な記念日に当館をお選びいただき、ありがとうございました」「おふたりのこれからの日々が、穏やかで実り多いものとなりますように」
団体の幹事様「先日は皆様でのご旅行に当館をご利用いただき、ありがとうございました」「幹事様のおかげで、私どももにぎやかな一日を過ごさせていただきました」

初めてのお客様へのお礼状の文例

初めてのお客様には、宿を選んでくださったことへのお礼を中心にします。

文例:初めてのお客様

〇〇様

朝夕の風に、秋の気配を感じるころとなりました。

このたびは数ある宿の中から当館をお選びいただき、誠にありがとうございました。露天風呂から見える山の景色を「来てよかった」と喜んでくださったこと、私どもも大変うれしく思っております。

またいつか、この町を訪れていただける日を心待ちにしております。季節の変わり目、どうぞご自愛くださいませ。

〇月〇日 〇〇旅館 女将 〇〇

常連のお客様へのお礼状の文例

常連のお客様には、変わらぬご愛顧へのお礼と、前回からの変化に触れるひと言が合います。

文例:常連のお客様

〇〇様

いつも変わらずお越しいただき、心より感謝申し上げます。

今回は、春に植えた庭の紅葉をご覧いただけて、私どもも楽しみにしていた甲斐がございました。お話しくださったお孫様のお話も、従業員一同うれしく伺いました。

次の季節にも、お元気なお顔を拝見できますことを楽しみにしております。

〇月〇日 〇〇旅館 女将 〇〇

常連のお客様ほど、毎回同じ文面だと気づかれやすいものです。前回のお礼状に何を書いたかを、メモに残しておくと安心ですよ。

記念日のお客様へのお礼状の文例

記念日のお客様には、お祝いの気持ちを中心にします。お祝いの内容は、予約の時やご滞在中に伺った範囲で書きましょう。

文例:記念日のお客様

〇〇様、△△様

このたびは大切な記念日に当館をお選びいただき、誠にありがとうございました。

夕食の時に、おふたりで乾杯されていたお姿がとても温かく、担当の仲居とも「素敵なご夫婦でしたね」と話しておりました。

おふたりのこれからの日々が、穏やかで実り多いものとなりますように。またの記念日にお会いできましたら幸いです。

〇月〇日 〇〇旅館 女将 〇〇

団体の幹事様へのお礼状の文例

団体のお客様の場合は、まとめ役をしてくださった幹事様にお礼状を出すことが多いです。準備や連絡のご苦労をねぎらうひと言を入れます。

文例:団体の幹事様

〇〇様

先日は皆様でのご旅行に当館をご利用いただき、誠にありがとうございました。

事前のお打ち合わせから当日のご案内まで、幹事様に細やかにご連絡いただいたおかげで、私どもも安心しておもてなしができました。宴会でのにぎやかな笑い声が、今も館内に残っているようです。

皆様にもどうぞよろしくお伝えくださいませ。またのご利用を心よりお待ちしております。

〇月〇日 〇〇旅館 女将 〇〇

よくある失敗

文例をそのまま使うと、どのお客様にも同じ手紙になってしまいます。真ん中の「滞在の思い出」の1〜2文だけは、毎回そのお客様のことを書くようにしてみてください。

一筆箋で短く伝える時の書き方

一筆箋は「ひとつの用件と、ひと言の気持ち」

一筆箋は、短い文章を書き送るための小型の便箋です。お礼状ほど形を整えず、ひとつの用件と気持ちをひと言で伝える時に向いています。

旅館では、お客様の忘れ物をお送りする時や、お土産の注文品をお届けする時に、一筆箋を添えることがあります。品物だけが届くより、ひと言あるとお客様はほっとするんです。

使う場面一筆箋の文例
忘れ物をお送りする「お部屋にお忘れの品をお送りいたします。お気づきになるのが遅れ、ご心配をおかけしました」
お土産をお届けする「お気に入りいただいたお茶を、ご注文どおりお届けいたします。どうぞお楽しみくださいませ」
写真をお送りする「ご出発の朝にお撮りした写真をお送りいたします。よい思い出になりますように」
パンフレットを添える「次の季節のご案内をお送りいたします。またお目にかかれる日を楽しみにしております」

一筆箋で気をつけたいこと

一筆箋は、便箋1枚分の長さになると窮屈に見えます。長くなりそうな時は、お礼状として書き直しましょう。

一筆箋を書く前のチェック
  • 用件がひとつにしぼられているか
  • 数行で収まる長さになっているか
  • 宛名と自分の名前を書いたか
  • 品物の説明と気持ちのひと言の両方が入っているか
旅館の帳場の机に、一筆箋と筆ペン、封筒がそろえて置かれている写真

宛名と封筒、送る前に確かめたいこと

宛名とお客様の情報は、とくにていねいに

お礼状は、お客様のお名前とご住所をお預かりして送るものです。宛名の書き間違いや、情報の扱い方には、本文以上に気を配ります。

せっかくの心のこもったお礼状も、宛名の漢字が違っていると台無しになってしまいます。送る前に、もう一度確かめる手順を決めておくと安心です。

お礼状を出すまでの手順
  1. 宿泊の記録から、お名前とご住所を確かめる
  2. 滞在中のメモを読み返し、思い出のひと言を決める
  3. 下書きをして、敬語や表現を見直す
  4. 清書して、宛名の漢字をもう一度見比べる
  5. 出した日と書いた内容を、お客様のメモに残す

お客様の情報の扱いで気をつけること

お客様のご住所は、大切な個人の情報です。お礼状を出す時も、宿の決まりに沿って扱いましょう。

気をつけたいこと

お礼状を望まないお客様もいらっしゃいます。予約の時に「お便りは不要」と伺っていたら、その気持ちを大切にします。また、ご家族やお連れ様に知られたくない旅行の可能性もあるので、旅の中身にどこまで触れるかは控えめにしておくと安心です。

女将の手紙が宿の仕事として続いていくために

お礼状は、毎日のように書くと大きな仕事になります。女将ひとりで抱えず、担当の仲居にひと言書いてもらう、帳場の人に宛名を手伝ってもらうなど、宿のみんなで分け合う形にすると続けやすくなりますよ。

お礼状のように、お客様とのつながりを大切にする仕事に興味が出て、旅館で働いてみたくなった方もいるかもしれません。旅館やホテルの仕事を探す時は、宿泊業界の求人に詳しい相談先を使う方法もあります。

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お客様から旅館へ手紙を出す時のよくある相談

お客様の側からの相談も多い

旅館の手紙については、お客様の側から「宿にお礼の手紙を出したい」という相談もよく寄せられています。宿の側の考え方も合わせて答えますね。

泊まった旅館にお礼の手紙を出したい。どう書けばいい?

宿泊券が当たって泊まった旅館や、とても良くしてもらった旅館に、お礼の手紙を出したいという相談はとても多く見かけます。

書き方は、この記事で紹介した5つのパーツと同じで大丈夫です。お客様からの手紙なら、例えばこんな文面になります。

文例:お客様から旅館へのお礼の手紙

〇〇旅館 女将様

先日はお世話になり、ありがとうございました。

お部屋に飾ってくださったお花と、夕食の温かいお料理のおかげで、家族そろって心からくつろぐことができました。

皆様にもどうぞよろしくお伝えください。また季節を変えて伺いたいと思っております。

〇月〇日 〇〇

宿の側から見ると、どの料理やどの場面がうれしかったかが書いてあると、とても励みになります。「よかったです」だけで終わらせず、ひとつだけ具体的に書いてみてください。

宿の人にとって、お客様からの手紙はとてもうれしいものです。迷惑になるのでは、と心配しなくても大丈夫ですよ。

宛名は「〇〇旅館 御中」でいい?

旅館にお礼の手紙を出す時、宛名を「〇〇旅館 御中」にしていいか、という相談もあります。

宿全体に宛てるなら「〇〇旅館 御中」、女将や担当の方に宛てるなら「〇〇旅館 女将 〇〇様」のように書くのが一般的です。「御中」と「様」は一緒に使わず、どちらか片方にします。

宛てる相手宛名の書き方の例
宿全体「〇〇旅館 御中」
女将「〇〇旅館 女将 〇〇様」
名前が分からない担当の方「〇〇旅館 ご担当の皆様」

お礼の手紙はパソコンで書いても失礼にならない?

お礼状は手書きでないと失礼か、パソコンで書いてもいいか、という相談もよく見かけます。

パソコンで書いても、失礼にはなりません。気持ちを足したい時は、最後に手書きでひと言と名前を添えると、ぐっと温かみが出ます。宿の側が出すお礼状でも、同じ考え方が使えますよ。

よくある質問

旅館のお礼状は、いつまでに出せばいいですか?

公的な決まりはなく、宿ごとに目安を決めていることが多いです。お客様の記憶が新しいうちに届くと、手紙の中身が伝わりやすくなります。

お礼状ははがきと封書、どちらがいいですか?

どちらでもかまいません。短く気軽に伝えるならはがき、記念日のお客様などていねいに伝えたい時は封書、と使い分ける宿もあります。

女将の手紙は、毎回女将本人が書くのですか?

宿によって違います。女将が書く宿もあれば、担当の仲居が書いて女将が名前を添える宿、帳場の人が書く宿もあります。

一筆箋とお礼状の違いは何ですか?

一筆箋は短い文章を書き送るための小型の便箋で、品物に添えるなど短く伝える時に使います。お礼状は、季節のひと言や結びまで整えて、お礼の気持ちをしっかり伝える手紙です。

お礼状の文例は、そのまま使ってもいいですか?

書き出しと結びは文例を使ってかまいません。真ん中の「滞在の思い出」の部分だけは、毎回そのお客様のことを書くと、心のこもった手紙になります。

まとめ

この記事の要点
  • お礼状の書き方は、季節のひと言・お礼・滞在の思い出・結び・日付と名前の5つのパーツが基本
  • いちばん大事なのは、そのお客様だけの「滞在の思い出」
  • 初めて・常連・記念日・団体の幹事様の4種類で、書き出しと結びを入れ替えて使える
  • 一筆箋は、ひとつの用件と気持ちのひと言を短く伝える時に向いている
  • 宛名の確認と、お客様の情報の扱いにはとくに気を配る
女将ガイド

女将ガイド 編集部

旅館の女将・若女将の仕事と役割、女将になるまでの道のり、着物や立ち居振る舞い、旅館のしきたりとおもてなし、旅館・料亭で働く方法までを、やさしく整理している情報サイトです。 公式サイト

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