女将がお客様を覚える方法|顧客ノートとお客様情報の扱い方

女将がお客様を覚える方法と顧客ノートの扱い方を紹介する記事のアイキャッチ。帳場の机のノートと着物の手元

当サイトの記事は編集部が公的機関の情報や辞書、公表されている統計などの公開情報を調べて独自に執筆しています。記事内に転職支援サービスへの案内(広告)を含みます。

2回目に泊まった宿で「お帰りなさいませ、〇〇様」と迎えられて、驚いたことはありませんか。『女将さんって、どうしてあんなにお客様を覚えているの?』と不思議に思う方も多いはずです。

結論から言うと、女将がお客様を覚えているのは記憶力だけの話ではありません。顧客ノートに書いて残し、宿のみんなで受け渡す仕組みがあるからなんです。

この記事を読めば、顧客ノートに何を書いて何を書かないか、覚えたことをお客様の前でどう活かすかが分かります。

目次

女将はお客様をどう覚えている?答えは「書いて残す」

先に結論

女将がお客様を覚える土台は、お泊まりのたびに書き足していく記録です。名前と顔を結びつける工夫と、次の担当者へ受け渡す仕組みがそろって、はじめて「覚えている宿」になります。

『自分は人の顔と名前を覚えるのが苦手だから、女将は無理かも』と心配になる方もいますよね。実は、最初から何でも覚えられる人はほとんどいません。

覚えているように見える女将も、お迎えの前に記録を読み返して準備しています。覚える力は、仕組みで補えるものなんです。

女将が覚えている情報は大きく3種類

種類中身の例いつ役立つか
お名前と顔予約のお名前、ご一緒の方、お子様のお名前玄関でのお出迎え、客室でのご挨拶
お好みとご要望お茶の濃さ、苦手な食材、枕の高さ、お部屋の階お部屋の用意、夕食の準備
前回のご様子ご旅行の目的、お祝いの内容、よく話題にされたこと会話のきっかけ、次の季節のご案内

お好みやご要望は、言われる前に用意するおもてなしにつながります。おもてなしの考え方そのものは、女将のおもてなしとはで紹介しています。

顧客ノートに書いてよいこと・書かないこと・共有の仕方

ここが一番大事なところです。お客様の情報は、たくさん書けばいいわけではありません。

「次のお泊まりで、お客様のために使える事実だけ」を書くと決めておくと、迷わなくなりますよ。

分け方中身の例理由
書いてよいこと苦手な食材、お部屋の好み、お祝いの内容、お子様の年ごろ次のお泊まりの準備にそのまま使える
書かないこと外見の特徴の評価、家族関係の詮索、うわさ話、宿の人の感想お客様のためにならず、読まれた時に失礼になる
共有の仕方担当の仲居・帳場・調理場など、準備に関わる人だけに伝える必要な人だけが知っていれば十分
顧客ノートに書いてよいこと・書かないこと・共有の仕方を3つに分けた図解

「書かないこと」の線引きの目安

『どこまで書いていいのか分からない』という方は、次の問いで判断してみてください。

書く前に自分に聞いてみること
  • お客様本人に見られても、気まずくない書き方か
  • 次のお泊まりで、お客様のために使う情報か
  • 自分の感想ではなく、お客様が話したこと・選んだことか
  • ご一緒の方の前で口にしても困らない内容か

ひとつでも引っかかったら、その一文は書かずにおきましょう。日本旅館協会の会員資格基準でも、お客様それぞれの価値観や文化の多様性に配慮し、価値観の押し付けによる差別や排除をしないことが求められています。

事実で書くと、誰が読んでも同じ準備ができる

記録は、感想ではなく事実で書くのがコツです。例えばこんな書き換えになります。

感想で書いた例事実で書き直した例
気難しい方お茶は熱めがお好み。夕食は品数を少なめにとのご希望
よくしゃべる方地元のお祭りの話をとても楽しまれた
細かい方お部屋の温度を低めにとご依頼。翌朝はそのままで快適とのこと
静かなご夫婦夕食は会話を控えめにお出しすると、ゆっくり召し上がっていた

事実で書いておけば、初めて担当する仲居さんでも同じ準備ができます。お客様をけなす言葉が残ることもありません。

顧客ノートの項目例と、書き足すタイミング

顧客ノートの形は、紙の台帳でも、パソコンの表でも、宿の予約の仕組みのメモ欄でもかまいません。宿の規模とスタッフの数に合わせて選べば大丈夫です。

そのまま使える顧客ノートの項目例

項目書き方の例
お泊まりの日と人数〇月〇日、大人2名
ご一緒の方ご夫婦、お子様(小学生くらい)
ご旅行の目的結婚記念日のお祝い
食事のご要望甲殻類は召し上がらない、ご飯は少なめ
お部屋のご要望階段の少ないお部屋、枕は低め
話題になったこと庭の紅葉をたくさん撮影されていた
お見送りの時のひと言次は春に来たいとのこと
挨拶状の送付年賀状の送付を了承済み

最後の「挨拶状の送付」は、季節のお便りを出す時に役立ちます。季節の挨拶状の例文は旅館の季節の挨拶状で紹介しています。

書き足すタイミングを決めておく

予約からお見送り後までの、顧客ノートを読む・書く流れを示した図解
顧客ノートを読む・書く流れ
  1. 予約が入ったら、前回までの記録を読み返す
  2. お迎えの前に、担当の仲居と帳場で要点を確かめる
  3. 滞在中に聞いたご要望は、その日のうちに短くメモする
  4. お見送りの後、担当者が記録を清書する
  5. 女将が目を通して、書かない方がよい一文がないか確かめる

『忙しい日に書く時間なんてない』と感じるのも自然です。そんな日は、お見送りの後に一行だけでも残しておきましょう。翌日に書き足せば十分間に合います。

覚えたことを、お客様の前でどう活かす?

覚えた情報は、使い方を間違えると「どうしてそんなことまで」と思われてしまうこともあります。ポイントは、さりげなく、お客様が話したことの範囲で触れることです。

喜ばれやすい触れ方
  • 「お帰りなさいませ。またお会いできてうれしいです」
  • 「前回のお料理、少なめにしておりますね」
  • 「春に来たいとおっしゃっていましたね」
戸惑われやすい触れ方
  • ご一緒の方の前で、前回の同行者の話をする
  • お客様が話していない事情を、こちらから口にする
  • 記録を読み上げるように、細かく全部伝える

例えばこんな会話になります。

「〇〇様、お帰りなさいませ。前回は紅葉の頃でしたね」
「覚えていてくれたんですね。今回は新緑を見に来ました」

このくらいの短いひと言で、お客様には十分伝わります。前回の話は、お客様が乗ってきた時だけ広げれば大丈夫です。

触れない方がよい場面

前回と違う方とご一緒の時や、お客様が前回の話を避けている様子の時は、記録にあることでも口にしません。覚えていることを見せるより、今日のお客様の気持ちを大事にしましょう。

記録をもとにした、場面別のひと言

記録をそのまま口にするより、今日のおもてなしに置きかえて伝える方が自然です。例えばこんな言い方があります。

記録にあることお客様へのひと言の例気をつけたいこと
前回は記念日のお祝いだった「今回もゆっくりお過ごしくださいね」今回もお祝いとは限らないので、決めつけない
枕は低めがお好み「低めの枕をご用意しております」好みが変わっていないか、さりげなく伺う
ご飯は少なめのご希望「お食事の量は前回と同じでよろしいですか」前回のことを確かめる形で聞く
次は春に来たいとおっしゃっていた「お庭の桜、ちょうど見頃です」約束を覚えていたと押しつけない
連泊で外出が多かった「お出かけの際はお声がけくださいね」行き先は、お客様が話した時だけ聞く

『覚えていると伝えた方が喜ばれるのでは?』と思う方もいますよね。ただ、覚えていることを見せるのは、お客様が心地よいと感じる範囲で十分です。

お名前を早く覚えるための小さな工夫

名前と顔を結びつける工夫
  • お迎えの前に、その日のお客様のお名前を声に出して確かめる
  • お出迎えの直後に、お名前でひと声かける
  • 客室へのご案内の途中で、もう一度お名前を呼ぶ
  • その日のうちに、お名前とご様子をメモに残す

お名前で呼ぶ回数を増やすと、自然と頭に残ります。お礼状を書く時にも、その日のメモがそのまま役立ちますよ。宿泊後のお礼状は、女将のお礼状の書き方を参考にしてみてください。

お客様情報を宿で扱う時に気をつけたいこと

旅館業法では、宿は宿泊者名簿を備えて、宿泊者の氏名や住所、連絡先などを記載することになっています。この名簿は法律で求められている記録です。

一方で、顧客ノートは宿がおもてなしのために自主的に残すものです。どちらもお客様の大切な情報なので、扱い方を宿で決めておきましょう。

決めておきたいこと決め方の例
どこに置くか帳場の鍵のかかる棚、パスワードのある端末
誰が見られるかお客様の準備に関わるスタッフだけ
持ち出しはどうするか館外へ持ち出さない、写真に撮らない
辞める人がいる時手元のメモを宿に返してもらう
お客様から消してほしいと言われたら宿の方針に沿って、すぐに対応する
よくある失敗

休憩室でお客様の話を大きな声でしてしまう、自分のスマートフォンにメモを残す、SNSに「今日はあの方がいらした」と書く。悪気がなくても、お客様の信頼を失うきっかけになります。

顧客ノートでよくある相談

Yahoo!知恵袋にも、お客様を覚えることや顧客ノートについての相談が寄せられています。旅館の仕事に関わるものを3つ選んで、要点をまとめてお答えしますね。

相談1:常連客の顧客ノートって、本当にあるの?

お店で働く人は、常連のお客様のことを記録した顧客ノートを本当に持っているのか、という相談です。

旅館でも、記録を残している宿は多いです。形は紙のノートだったり、予約の仕組みのメモ欄だったりと、宿によってさまざまです。

ただ、記録があるかどうかより大事なのは、それをお客様のためだけに使うことです。記録はおもてなしの準備のための道具なんです。

相談2:いつも行くお店で、話した話題をよく覚えていてくれるのはなぜ?

通っているお店の人が、前回話した話題をよく覚えていて感心する。どうやって覚えているのか、という相談です。

多くの場合、お客様が帰った後に短いメモを残しているからです。旅館でも、お見送りの後に「話題になったこと」を一行書いておく宿があります。

次にお迎えする前にそのメモを読み返すので、自然に前回の話ができるんですね。

相談3:顧客の情報管理は、紙とソフトのどちらがいい?

お店を経営していて、お客様の情報管理と運営に使える方法を探している、という相談です。

旅館なら、スタッフの人数と、何人で記録を見るかで選ぶのがおすすめです。家族で営む小さな宿なら紙の台帳でも十分回りますし、担当が多い宿なら共有しやすい仕組みの方が向いています。

どちらを選んでも、置き場所と見られる人を決めておくことは同じです。

旅館の仕事に興味が出てきたら

お客様を覚える工夫を知って、ひとりひとりと長くつながる旅館の仕事に興味が出てきた方もいるかもしれません。女将の仕事に興味が出て、まず旅館で働いてみたくなった時は、宿泊業界の仕事を探す相談先を使う方法もあります。

おもてなしHR(PR)

旅館・ホテルの仕事を探すなら、宿泊業界専門の転職支援に相談

おもてなしHRは、ホテル・旅館などの宿泊業界の求人専門の転職支援サービスです。専任のキャリアアドバイザーが、経験の有無や希望職種を問わず、書類作成や面接の日程調整、条件面の相談まで無料でサポートします。

無料おもてなしHRの公式サイトを見る

サービスの内容は公式サイトでご確認ください。

女将が毎日どんな仕事をしているかは、女将の仕事内容で紹介しています。

よくある質問

女将はお客様をどうやって覚えているのですか?

記憶力だけに頼らず、顧客ノートなどに記録を残し、お迎えの前に読み返しています。担当の仲居や帳場と要点を共有して、宿全体でお客様を覚える形です。

顧客ノートには何を書けばいいですか?

苦手な食材やお部屋の好み、お祝いの内容など、次のお泊まりの準備に使える事実を書きます。外見の評価やうわさ話、宿の人の感想は書きません。

顧客ノートと宿泊者名簿は同じものですか?

別のものです。宿泊者名簿は旅館業法で備えることになっている記録で、顧客ノートは宿がおもてなしのために自主的に残す記録です。

覚えていることを、お客様に伝えた方がいいですか?

お客様が話したことの範囲で、短いひと言で触れる程度がちょうどよいです。ご一緒の方が前回と違う時など、触れない方がよい場面もあります。

人の名前を覚えるのが苦手でも女将になれますか?

なれます。記録を読み返す、お名前で呼ぶ回数を増やすなど、仕組みと習慣で補えます。

まとめ

この記事の要点
  • 女将がお客様を覚えているのは、顧客ノートに書いて残す仕組みがあるから
  • 書くのは次のお泊まりに使える事実だけ。評価や感想、うわさ話は書かない
  • 共有はお客様の準備に関わる人だけに
  • 覚えたことは、お客様が話した範囲でさりげなく触れる
  • 置き場所・見られる人・持ち出しのルールを宿で決めておく
女将ガイド

女将ガイド 編集部

旅館の女将・若女将の仕事と役割、女将になるまでの道のり、着物や立ち居振る舞い、旅館のしきたりとおもてなし、旅館・料亭で働く方法までを、やさしく整理している情報サイトです。 公式サイト

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次