旅館のお出迎えとお見送り|女将の作法と気配りのポイント

旅館のお出迎えとお見送りを紹介する記事のアイキャッチ。旅館の玄関で一礼する着物の後ろ姿

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旅館で働き始めて、玄関に立つ日が近づいている方。『お出迎えって、何を言って、どこに立てばいいの?』と不安になりますよね。

結論から言うと、旅館のお出迎えとお見送りは「到着前から車が見えなくなるまで」がひと続きの仕事です。玄関での一礼は、その中のほんの一場面なんです。

この記事では、お出迎えとお見送りを5つの段階に分けて、女将や仲居が気を配っていることを順番に見ていきます。

目次

旅館のお出迎えとお見送りは、何のためにするの?

先に結論

お出迎えは「お待ちしていました」、お見送りは「またお会いしたいです」を形にする場面です。お客様の旅の始まりと終わりに宿の印象が残るので、どの宿でも大切にされています。

お出迎えやお見送りに、法律の決まりや全国共通の型はありません。宿の規模や方針によって、女将が立つ宿もあれば、担当の仲居やフロントが立つ宿もあります。

『じゃあ、正解はないの?』と思うかもしれませんね。ただ、どの宿でも共通しているのは、お客様が「迎えてもらえた」「送ってもらえた」と感じられることなんです。

場面お客様が感じたいこと宿が伝えたいこと
お出迎え無事に着いた、ここで合っていたお待ちしていました
ご案内迷わずにお部屋まで行けるゆっくりお過ごしください
お見送り気持ちよく出発できるまたお越しください

女将の仕事全体の中での位置づけは、女将とはでも紹介しています。

お出迎えとお見送りを5つの段階で見てみましょう

段階ごとに「やること」を決めておく

お出迎えとお見送りは「到着前の準備」「玄関」「客室までのご案内」「お会計後」「車が見えなくなるまで」の5段階に分けると、抜けが見えやすくなります。

お出迎えとお見送りを、到着前の準備から車が見えなくなるまでの5段階に分けた図解

ここからは、それぞれの段階で確かめたいことをチェックリストにしました。宿の決まりに合わせて、項目を足したり減らしたりして使ってみてください。

1. 到着前の準備

お出迎えの良し悪しは、実はお客様が着く前にほとんど決まっています。予約の内容を知っているかどうかで、最初のひと言が変わるからです。

到着前に確かめること
  • 今日到着するお客様のお名前と人数を確認する
  • 記念日や苦手な食べ物など、予約時に伺ったことを読み返す
  • 到着予定の時間と、車か電車かを確かめる
  • 玄関の床、スリッパ、傘立てを整える
  • 雨の日はタオルを手の届く所に用意する

前に泊まったことのあるお客様なら、前回のメモにも目を通しておきます。お客様の情報の扱い方は顧客ノートとお客様情報の扱い方で紹介しています。

2. 玄関でのお出迎え

車が見えたら、玄関の外まで出てお迎えする宿が多いです。お客様が車を降りたら、目を合わせてからお辞儀をします。

例えば、こんなひと言です。

「〇〇様、遠いところをようこそお越しくださいました。お待ちしておりました」

お名前でお呼びできると、お客様は「覚えてもらえていた」と安心しやすいんです。

玄関で気を配ること
  • 先に荷物を受け取るか、お客様に伺ってから預かる
  • 靴を脱ぐ段差があれば、ひと声かける
  • 小さなお子様や年配の方の足元に目を配る
  • お連れ様がまだ車の中なら、全員がそろうまで待つ

3. 客室までのご案内

ご案内は、お客様の半歩前を斜めに歩くのが基本とされています。階段や曲がり角の手前で、ひと声かけると歩きやすくなります。

「こちら、段差がございますのでお足元にお気をつけください」

廊下を歩く間に、大浴場の場所や夕食の時間を短く伝える宿もあります。話しすぎず、お客様が景色を楽しんでいたら静かに歩くのも気配りですよね。

お部屋に着いたら、先にお客様に入っていただき、荷物を置く場所を伺います。お茶をお出しして館内の説明をするのは、担当の仲居が受け持つ宿も多いです。

ご案内の途中で気を配ること
  • エレベーターでは先に乗って扉を押さえ、降りる時はお客様を先にする
  • 歩く速さをお客様に合わせる
  • 館内の説明は、夕食と大浴場など大事なものから短く伝える
  • お部屋の前で一度止まり、「こちらでございます」と声をかける

4. お会計後のお見送りの準備

出発の朝は、お会計が終わったら荷物を玄関まで運び、お車を回します。ここで慌ただしく見えると、最後の印象が下がってしまうことも。

お会計の前後で確かめること
  • お部屋に忘れ物がないか、担当の仲居と確かめる
  • お預かりした荷物や貴重品をお返ししたか確認する
  • 帰りの道や天気について、ひと言添える準備をする
  • お車が玄関に着く時間を、お客様にお伝えする

5. 車が見えなくなるまで

お客様の車が動き出したら、見えなくなるまで頭を下げたり、手を振ったりしてお見送りする宿があります。お客様が振り返った時に、まだ見送っている姿が見えると、気持ちが伝わりやすいんです。

旅館の玄関で、出発するお客様の車をお見送りする場面をイメージした写真

『車が動いたら、もう戻ってもいいのでは?』と思う方もいますよね。実は、お客様が角を曲がる前にバックミラーや窓から振り返ることはよくあります。

その時に玄関が空っぽだと、少しさみしい気持ちになるかもしれません。最後の数十秒まで見送る宿が多いのは、そのためなんです。

車が見えなくなるまでに気を配ること
  • 車が動き出してから頭を上げるタイミングを、一緒に立つ人とそろえる
  • 手を振るなら、お客様が振ってくださった時に控えめに振り返す
  • 見えなくなってから、玄関の片づけや次のお客様の準備に移る
  • お見送りで聞いた言葉や様子を、帳場や担当の仲居に伝える

ここまでが、ひと続きのお出迎えとお見送りです。

女将のお見送りとお出迎え、作法と言葉のポイント

作法は「お辞儀」と「ひと言」の2つから

女将のお見送りやお出迎えで目に残るのは、お辞儀の深さと、最初と最後のひと言です。角度や言葉は宿や地域で違うので、自分の宿のやり方に合わせて覚えていきましょう。

お辞儀の深さには目安があります。ハローワーク札幌東が公開しているマナーの資料では、次のように紹介されています。

お辞儀角度の目安お出迎え・お見送りで使う場面の例
会釈15度程度廊下ですれ違った時、お連れ様への軽いご挨拶
敬礼30度程度玄関でのお出迎えの一礼
最敬礼45度程度出発のお客様に深くお礼を伝える時

角度は「程度」の目安です。立礼と座礼の違いや、きれいに見せるコツは女将のお辞儀と座礼で詳しく見られます。

お出迎えの言葉とお見送りの言葉

最初と最後のひと言は、短くてかまいません。ここでは言い回しの例を並べてみました。

場面言い回しの例
到着された時「ようこそお越しくださいました」
雨の日の到着「お足元の悪い中、ありがとうございます」
2回目以降のお客様「またお会いできてうれしいです」
出発の時「ご宿泊ありがとうございました。お気をつけてお帰りくださいませ」
車が動き出す時「またのお越しをお待ちしております」

女将がお見送りの時に見ていること

女将のお見送りは、ただ頭を下げるだけの時間ではありません。お客様の表情や、帰り際のひと言から、滞在がどうだったかを感じ取る時間でもあるんです。

例えば、出発の時にこんな会話になることがあります。

「お料理、とてもおいしかったです」
「ありがとうございます。板場にも伝えておきますね」

こうしたひと言を調理場や仲居に伝えると、宿全体のはげみになります。もし気になる様子があれば、後でお礼状を送る時の参考にもなりますよ。

挨拶の言葉をもっと知りたい方は、女将の挨拶に場面ごとの例文をまとめています。

よくある失敗

お辞儀をしながら話すと、言葉が床に向かって聞き取りにくくなります。先に言葉を言ってからお辞儀をする「語先後礼」を意識すると、気持ちが伝わりやすくなります。

個人・団体・雨の日、場面でどう変える?

型はそのまま、お客様に合わせて加減する

お出迎えとお見送りの型は同じでも、お客様の人数や天気、到着の時間によって、気配りの中身は変わります。

『団体のお客様の時も、1組ずつと同じようにやるの?』と迷う方もいるはずです。よくある場面を表にしました。

場面お出迎えで気をつけることお見送りで気をつけること
ご家族やご夫婦お名前でお呼びし、お子様にもひと声写真を頼まれたら、撮ってからお見送り
団体のお客様幹事様を先に確かめてご挨拶バスが出るまで並んでお見送り
雨や雪の日傘とタオルを持って車まで出るお車の近くまで傘をさしかける
遅い時間の到着お疲れを気づかって手短にご案内早朝出発なら前夜にご挨拶を済ませる
連泊のお客様外出から戻られたら「お帰りなさいませ」最終日にまとめてお礼を伝える

宿によっては、到着の時に「お帰りなさいませ」と声をかけるところもあります。我が家に帰ってきたような気持ちになってほしい、という考え方なんです。

女将が立つ時間と1日の流れ

旅館の1日は、朝のお見送りと夕方のお出迎えが2つの山になります。女将はその間に帳場や館内の仕事を挟んでいくことが多いです。

時間の流れで見たい方は、女将の1日も読んでみてください。

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お出迎えとお見送りのよくある相談

迷うのは「やりすぎ」と「やらなさすぎ」の境目

お出迎えとお見送りについては、お客様の側からも働く側からも、さまざまな相談が寄せられています。よく見かけるものに答えますね。

個人のお客様と団体のお客様で、お見送りを変えてもいい?

旅館でフロントの仕事をしている方から、個人とグループでお見送りのやり方をどうするか、という相談があります。

変えてかまいません。団体のお客様はバスの出発に合わせて並んでお見送りし、個人のお客様は担当が1人でゆっくり送る、という宿もあります。大事なのは、どのお客様にも「送ってもらえた」と感じてもらうことです。

お見送りの時、カーナビを設定したいのに待たせて悪い気がする

お客様の側から、玄関に車を回してもらった時にカーナビを設定したいけれど、見送りの人を待たせるのが気になる、という声もあります。

働く側としては、気にせず設定していただいて大丈夫です。お見送りする側は、例えばこんなひと言で気持ちを軽くしてあげられます。

「お急ぎにならなくて大丈夫ですよ。どうぞごゆっくりご準備ください」

従業員が大勢並んでお出迎えされると、恥ずかしい

大勢の従業員が並んでお出迎えされると落ち着かない、という声も見かけます。そう感じる方がいるのは自然なことです。

働く側にできること

到着されたお客様の様子を見て、緊張していそうなら早めにお部屋へご案内するのも気配りです。宿の方針で並ぶ場合も、笑顔で短くご挨拶を済ませると、お客様の気持ちが楽になります。

よくある質問

旅館のお見送りは、どこまでするのが一般的ですか?

玄関でお辞儀をしてお見送りする宿が多く、車が見えなくなるまで見送る宿もあります。どこまでするかは宿の方針によって違います。

女将のお見送りは、毎回女将本人がするのですか?

宿によって違います。女将が立つ宿もあれば、若女将や担当の仲居、フロントがお見送りする宿もあります。

お見送りの時、手は振ってもいいですか?

お辞儀で送る宿も、手を振って送る宿もあります。お客様が手を振ってくださったら、片手で控えめに振り返すと自然です。

チェックアウト後に出発されるお客様もお見送りしますか?

多くの宿では、お客様が宿を出られる時にお見送りをします。時間が過ぎていても、宿を出る時のひと言は気持ちよく伝えたいですね。

まとめ

この記事の要点
  • 旅館のお出迎えとお見送りは、到着前から車が見えなくなるまでがひと続き
  • 到着前の準備、玄関、ご案内、お会計後、車が見えなくなるまでの5段階で考える
  • お辞儀は会釈15度程度、敬礼30度程度、最敬礼45度程度が目安
  • 言葉を言ってからお辞儀をすると、気持ちが伝わりやすい
  • 人数や天気、到着時間に合わせて気配りの中身を変える
女将ガイド

女将ガイド 編集部

旅館の女将・若女将の仕事と役割、女将になるまでの道のり、着物や立ち居振る舞い、旅館のしきたりとおもてなし、旅館・料亭で働く方法までを、やさしく整理している情報サイトです。 公式サイト

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