お茶の入れ方|旅館の客室でのお茶出しの手順と作法

旅館のお茶の入れ方とお茶出しの手順を紹介する記事のアイキャッチ。客室の座卓で急須からお茶を注ぐ着物の手元

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旅館に着いてお部屋に通されると、まず温かいお茶が出てきますよね。あの一杯で、長旅の疲れがすっとほどけたという方も多いはずです。

結論から言うと、旅館のお茶の入れ方は「お湯を少し冷ましてから、茶葉に合った時間だけ待ち、最後の一滴まで注ぎ分ける」ことがおいしさの決め手です。

この記事を読むと、客室でのお茶出しの手順と、湯温や時間の目安、お出しする時の所作が分かります。

目次

旅館のお茶出しで、まず覚えておきたいことは?

先に結論

旅館のお茶出しは、お客様が部屋に入って最初にふれるおもてなしです。お茶の種類に合ったお湯の温度と、落ち着いた所作の2つを押さえておけば大丈夫です。

『熱いお湯で入れればいいんじゃないの?』と思う方もいるかもしれません。実は、お茶の種類によって合うお湯の温度が違うんです。

農林水産省は、お茶の種類ごとに湯温と時間の目安を紹介しています。旅館でよく使うお茶に当てはめると、次のようになります。

お湯の温度待つ時間の目安向いているお茶味わいの特徴
低温(50~60℃)1~2分玉露うま味と甘みが豊富で、まろやか
中温(70~80℃)30秒~1分煎茶、深蒸し茶など渋みとうま味のバランスがいい
高温(90~100℃)30秒~1分ほうじ茶、玄米茶香ばしく、すっきりした味わい

旅館の客室に置かれることが多い煎茶なら、中温が目安です。沸かしたてのお湯をそのまま注ぐと、渋みが強く出やすくなります。

お茶出しは誰の仕事?

客室でのお茶出しは、担当の仲居が受け持つ宿が多いです。家族で営む小さな宿では、女将がお部屋に伺ってお茶を入れることもあります。

働き始めたばかりの頃は、先輩が入れたお茶と自分が入れたお茶を飲み比べてみるのがおすすめです。色や香りの違いが分かると、どこを直せばいいかが見えてきます。

例えば、「少し色が薄いね」と言われたら、待つ時間を少しだけ延ばしてみる。こうした小さな調整を重ねるうちに、宿のお茶の味が自然と身についていきますよ。

仲居の仕事全体は仲居とは?旅館の仲居の仕事内容、女将の役割は女将とは?旅館で女将が担う役割で紹介しています。

客室でのお茶出しは「湯を冷ます・茶葉と時間・注ぎ分け・お出しする」の4段階

4つに分けると、どこでつまずいたか分かる

お茶出しを4つの段階に分けて覚えると、味が安定しない時に「どこを直せばいいか」が見えてきます。

客室でのお茶出しを、湯を冷ます・茶葉と時間・注ぎ分け・お出しするの4段階で示した図解
段階することここで気をつけたいこと
1. 湯を冷ます湯呑みにお湯を注ぎ、少し置いてから急須へ戻す湯呑みも温まり、お湯もちょうどよく冷める
2. 茶葉と時間茶葉を急須に入れ、お湯を注いでふたをして待つ待つ間に急須をゆすらない
3. 注ぎ分け湯呑みに少しずつ順番に注ぎ、濃さをそろえる最後の一滴まで注ぎきる
4. お出しする茶托にのせ、お客様の前に静かにお出しする上座のお客様から順に

1. 湯を冷ます

ポットのお湯を、まず人数分の湯呑みに注ぎます。静岡県の紹介では、湯呑みに8分目ほどお湯を入れて冷ます方法が示されています。

こうすると湯呑みが温まり、お湯の量も人数分にそろうんです。ひと手間で、二つのことが同時にできるんですね。

2. 茶葉と時間

茶葉の量は、農林水産省の広報誌の特集では、一人あたりティースプーン約1杯(2~3グラム)が目安とされています。冷ましたお湯を急須に注いだら、ふたをして待ちます。

『待つ間、何をしていればいいの?』と思いますよね。この時間に、夕食の時間やお風呂の場所をお伝えすると、お客様との会話が自然に生まれますよ。

3. 注ぎ分け

湯呑みが複数ある時は、一つずつ注ぎきるのではなく、少しずつ順番に回しながら注ぎます。こうすると、どの湯呑みも同じ濃さになるんです。

静岡県の紹介でも「廻しつぎ、最後の一滴までお茶は絞りきりましょう」とされています。最後の一滴にうま味が詰まっているので、急須を傾けきって注ぎましょう。

2煎目をおいしくするコツ

最後まで注ぎきっておくと、急須の中にお湯が残らず、2煎目も渋くなりにくくなります。お客様がおかわりを入れる時のためにも、注ぎきりを習慣にしておきたいですね。

4. お出しする

湯呑みは茶托にのせて、お客様の前にお出しします。床の間の前が上座とされるので、上座に座る方から順にお出しするのが一般的です。

「どうぞ、温かいうちに召し上がってください」とひと声添えると、お客様も手を伸ばしやすくなります。

煎茶・玉露・番茶で、入れ方はどう変える?

等級や種類で、湯温と時間を変える

同じ煎茶でも、上級のものと普段のものでは合う湯温が違います。宿で使っているお茶に合わせて、目安を決めておきましょう。

静岡県は、お茶の種類と人数ごとに、茶葉の量と湯温、待つ時間の目安を紹介しています。

お茶の種類人数茶葉の量お湯の温度待つ時間
煎茶(上)3人分6g70℃2分
煎茶(並)5人分10g90℃1分
玉露3人分10g50℃(上)、60℃(並)2分
番茶5人分15g熱湯30秒

農林水産省の目安は煎茶で70~80℃・30秒~1分、静岡県の煎茶(上)は70℃・2分です。お茶の等級や蒸し方で合う入れ方が違うので、宿で使うお茶の袋の表示も見てみてください。

よくある失敗

お客様を待たせまいと、待つ時間を短くしすぎると、色も香りも薄いお茶になってしまいます。反対に、長く置きすぎると渋みが強くなることも。砂時計を急須のそばに置いておく宿もあります。

お茶出しの所作、ここを見られている

動きはゆっくり、音を立てない

お茶の味と同じくらい、お茶をお出しする時の動きもお客様の印象に残ります。ゆっくり、音を立てずに動くことを意識してみてください。

『緊張して、湯呑みがカタカタ鳴ってしまう』という声もよく聞きます。手元を落ち着かせるには、両手で扱うことがいちばんの近道なんです。

お茶出しの所作チェック
  • 部屋に入る前に、ひと声かけてから襖を開けたか
  • 座って作業する時、背筋を伸ばしているか
  • 急須や湯呑みを片手で持たず、もう一方の手を添えたか
  • 湯呑みの絵柄がお客様の正面に向いているか
  • 茶托を置く時、音を立てなかったか
  • お出しした後、ひと言添えてから下がったか
客室の座卓で茶托にのせた湯呑みを両手でお出しする手元の写真

座ったままの所作や襖の開け方など、和室での動き方は着物の所作と立ち居振る舞いで詳しく紹介しています。お辞儀の仕方は女将のお辞儀と座礼も見てみてください。

お茶と一緒にお出しするお菓子

旅館では、お茶と一緒に地元のお菓子を添えることが多いです。お菓子はお茶の左側に置く宿も、正面に置く宿もあり、置き方は宿の決まりに合わせます。

例えば、「こちらは地元で昔から作られているお菓子です」とひと言添えると、それだけで旅の話題になりますよ。

お茶出しの時にかける言葉の例

お茶出しの間は、お客様と最初にゆっくり話せる時間でもあります。場面ごとに、ひと言を決めておくと安心です。

場面声かけの例
お部屋に入る前「ごめんくださいませ。お茶のご用意に参りました」
お湯を冷ましている間「長い道のり、お疲れでございましたでしょう」
お茶をお出しする時「熱いのでお気をつけて、ごゆっくりどうぞ」
下がる時「おかわりは、こちらの急須でお好きな時にどうぞ」

言葉は短くていいんです。お茶を味わう時間をじゃましないことも、気配りのひとつですね。

お客様に合わせたお茶出しの気配り

季節とお客様の様子で、一杯を変える

同じお茶でも、季節やお客様の様子に合わせて出し方を変えると、心に残るおもてなしになります。

暑い日に汗をかいて着いたお客様には、冷たいお茶を用意している宿もあります。寒い日は、湯呑みを少し熱めに温めておくと喜ばれます。

お客様の様子お茶出しの工夫の例
暑い中を歩いて着いた冷たいお茶を先にお出しして、温かいお茶は後で
寒い日に車で着いた湯呑みをよく温めて、温かいお茶をすぐに
すぐに出かけたい様子お茶だけお出しして、説明は短めに
ゆっくり話したい様子2煎目をお入れしながら、周辺の案内を

『お茶出しのタイミングで、説明を全部しなきゃ』と焦る必要はありません。お客様の様子を見て、今は短く済ませた方がいいと思えば、それも大切な気配りです。

おかわりと片付けのタイミング

最初の一杯をお出しした後は、急須とお湯をお部屋に残しておく宿が多いです。お客様が好きな時に、ご自分で入れられるようにするためです。

湯呑みを下げるのは、夕食の準備や布団の用意でお部屋に伺う時がちょうどいいですよ。「お茶のお道具、新しいものにお取り替えいたしますね」とひと声かけて、茶葉とお湯も入れ替えておきましょう。

夕食を客室で召し上がる宿では、食後にもう一度お茶をお出しします。食事の流れは旅館の部屋食とはで紹介しています。

お茶の入れ方を覚えるうちに、旅館の仕事そのものに興味が出てきた方もいるかもしれません。旅館やホテルで働く道を考えた時は、宿泊業界の仕事探しに詳しい相談先を使う方法もあります。

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旅館のお茶のよくある相談

客室のお茶セットは、意外と知られていない

泊まった方からは、客室に置かれたお茶セットの使い方について、たくさんの相談が寄せられています。よく読まれているものに答えますね。

お茶セットの、穴のあいた筒は何に使う?

旅館のお茶セットに入っている、ふたに穴のあいた筒は何に使うのか、という相談がとても多く読まれています。灰皿だと思っていた、という声も見かけます。

これは、茶こぼしと呼ばれることが多い器です。急須に残った茶殻や、湯呑みを温めたお湯を捨てるために使います。

お客様が2煎目、3煎目と入れ替える時に、洗面所まで行かなくて済むように置かれているんです。

お茶の道具が入った箱の名前は?

急須や湯呑み、茶筒がまとめて入っている入れ物の名前を知りたい、という相談もあります。

茶櫃(ちゃびつ)と呼ばれることが多いです。お客様が使いやすいよう、ふたを開ければすぐにお茶を入れられる形で置いておく宿が多いですね。

食後に出されたお茶は、無理しても飲みきるべき?

旅館の夕食の後に出されたお茶を、お腹がいっぱいでも飲みきるべきか迷った、という相談も見かけます。

結論から言うと、飲みきらなくても失礼にはなりません。お茶は食後にほっとしていただくためのもので、残しても気にされることはないので安心してください。

よくある質問

お茶の入れ方で、いちばん大事なことは何ですか?

お茶の種類に合ったお湯の温度にすることです。煎茶なら、沸かしたお湯を湯呑みに移して少し冷ましてから使うと、渋みとうま味のバランスがよくなります。

旅館のお茶出しは、何人分まで一度に入れますか?

急須の大きさと人数によります。人数が多い時は、急須を分けたり、2回に分けて入れたりして、濃さがそろうようにします。

お茶出しの時、湯呑みの絵柄はどちらに向けますか?

絵柄がお客様の正面に向くようにお出しするのが一般的です。宿によって決まりがある場合は、それに合わせます。

お茶出しの練習は、家でもできますか?

できます。家の急須と湯呑みで、湯を冷ます・待つ・注ぎ分ける・お出しするの流れをくり返すと、手が覚えてきます。家族にお出しして、味の感想を聞いてみるのもおすすめです。

旅館のお茶は、2煎目も同じ入れ方でいいですか?

2煎目は茶葉が開いているので、待つ時間を短めにしてすぐに注ぐのが一般的です。1煎目で最後の一滴まで注ぎきっておくと、2煎目もおいしく入ります。

まとめ

この記事の要点
  • 旅館のお茶出しは、湯温と所作の2つを押さえれば大丈夫
  • 客室でのお茶出しは、湯を冷ます・茶葉と時間・注ぎ分け・お出しするの4段階
  • 煎茶は中温(70~80℃)で30秒~1分が農林水産省の目安
  • 注ぎ分けは少しずつ回し、最後の一滴まで注ぎきる
  • 季節やお客様の様子に合わせて、出し方を変える
女将ガイド

女将ガイド 編集部

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