当サイトの記事は編集部が公的機関の情報や辞書、公表されている統計などの公開情報を調べて独自に執筆しています。記事内に転職支援サービスへの案内(広告)を含みます。
旅館に泊まると、着物姿の女将さんが玄関で迎えてくれることがありますよね。『ホテルにはいないのに、旅館にはなぜ女将がいるんだろう』と不思議に思った方も多いはずです。
結論から言うと、多くの旅館が家業として受け継がれ、その家の女主人が接客をまとめてきたからです。法律で決まった役職ではなく、宿の暮らしの中から生まれた立場なんです。
この記事を読むと、旅館に女将がいる理由と、女将がいない宿や男性が表に立つ宿があるわけまで分かります。
旅館に女将がいるのはなぜ?先に答えをまとめると
旅館の女将は、家で営む宿の「女主人」が接客の中心に立ってきたことから続いている立場です。今も家業として受け継ぐ旅館が多いので、女将という呼び名と役割が残っています。
まずは言葉の意味から見てみましょう。辞書では、女将は「料理屋・旅館・待合など客商売の家の女主人」と説明されています。
ここで大事なのは「客商売の家の女主人」という言い方です。女将は会社の役職として生まれた言葉ではなく、家で営むお店や宿のおかみさんを指す言葉だったんですね。
さらに辞書の補足には、大きな宿では経営者の一族の女性がなり、主に接客をまとめる職名にもなっている、と書かれています。家の女主人という意味と、接客のまとめ役という職名の意味。この2つが重なっているのが、今の旅館の女将です。
女将という言葉の意味や読み方は女将とは?意味と読み方で詳しく紹介しています。
旅館の女将がいる理由を3つにまとめると
| 理由 | どういうことか |
|---|---|
| 家業の宿が多い | 家族で宿を営み、家の女主人がお客様を迎えてきた |
| 客室で過ごす時間が長い | 1泊2食で、夕食から翌朝まで宿の中で過ごすお客様が多い |
| 宿の「顔」が求められる | 誰がこの宿を預かっているのかを、お客様に見える形で示せる |
この3つは、どれか1つではなく重なり合っています。次の見出しから、順番に見ていきますね。
女将が生まれた背景は「家で営む宿」
『昔からある職業なの?』と気になりますよね。実は、女将という言葉の古い用例は、明治のはじめごろの文献に見られると辞書に載っています。
「旅館」という言葉そのものも、明治時代に高級な宿を指す言葉として使われ始め、広く使われるようになったのは昭和になってからだそうです。明治のころは「宿屋」と呼ぶのがふつうでした。
家の女主人が、お客様のお世話を取りしきった
辞書の「御上」の項目には、かつて商人や職人の妻を「おかみさん」と呼んだと書かれています。お店や宿を家族で営む中で、家の女主人がお客様と向き合ってきたことがうかがえます。
宿の場合、家の中のこととお客様のお世話は切り離せません。食事、寝具、客室の整え、お客様との会話。こうした仕事をまとめる人が、自然と宿の顔になっていったんですね。
今も「家業として受け継ぐ旅館」が多い
この形が今まで続いているのには、もう1つ理由があります。観光庁の検討会資料では、宿泊業の課題の1つとして「家業的な経営形態」が挙げられています。
同じ資料には、宿泊事業者の6割以上が小規模な事業者で、家業として経営を受け継ぐ旅館が多いと書かれています。家で営む宿が多いからこそ、家の女主人が女将として表に立つ形も残っているわけです。
この「家業」という言葉は、良い悪いの話ではありません。家族で宿を守ってきたことが、女将という立場を今に伝えてきた、という意味で受け止めてみてください。
日本旅館で女将が担ってきた3つの役割
女将の役割は「家の顔」「客室の責任者」「地域とのつなぎ役」の3つに分けると見えやすくなります。ホテルでは別々の人が担う仕事を、旅館では女将が1人でまとめていることが多いんです。
ここからは、日本旅館の女将がしていることを、少し違う角度から見てみます。ホテルの職種と並べると、女将がいる理由がぐっと分かりやすくなりますよ。

役割1:家の顔として、お客様を迎える
女将はお出迎えやお見送り、客室へのご挨拶で、お客様の前に立ちます。『この宿は誰が預かっているのか』が見えると、お客様は安心しやすいものです。
例えば、到着の玄関でこんな言葉を交わします。
「遠いところをようこそお越しくださいました。女将の〇〇でございます」
「お世話になります。きれいな玄関ですね」
ホテルのフロントでも同じような会話はあります。ただ旅館では、到着の玄関から翌朝のお見送りまで、同じ人が節目ごとに顔を出すことが多いんです。
『昨日の女将さんが、帰りも見送ってくれた』。この安心感が、家で営む宿らしさにつながっています。
役割2:客室で過ごす時間を見守る
日本旅館では、1泊2食の料金で泊まるのが一般的だと辞書にあります。夕食も朝食も宿でとるので、お客様は長い時間を宿の中で過ごします。
日本旅館協会の会員の基準には、客室に床の間や、それに代わる造作があることが挙げられています。和室でくつろぎ、食事をし、布団で休む。この時間全体に目を配る人が必要になるんですね。
例えば、記念日のお客様がいる日を考えてみてください。夕食のお祝いの一品、客室の花、仲居のひと言。別々の人が動くので、全体をまとめる人がいると抜けが出にくくなります。
- 予約の内容から、お祝いや食事の希望を確かめる
- 仲居や調理場に、お客様のことを伝えておく
- 夕食の時間に客室へ伺い、困りごとがないか聞く
- 翌朝、お見送りの時にひと言お礼を伝える
役割3:地域とのつなぎ役になる
温泉地などでは、女将同士が「女将の会」をつくり、地域のPRや特産品づくりに取り組む例があります。宿の外に出て、地域の魅力を伝える役も担っているんです。
お客様にとっては、宿だけでなくその土地で過ごす時間も旅の思い出になります。近くの見どころやお祭りの話ができる女将がいると、旅の楽しみが広がりますよね。
「明日はどちらへ行かれますか」
「朝市に寄ってみようと思っています」
「それでしたら、早めの時間がにぎやかですよ。お帰りの前にお荷物をお預かりしましょうか」
こうした会話は、地域を知っている人だからこそできるものです。
ホテルの職種と並べて比べてみる
| 女将の役割 | 旅館での主な仕事 | ホテルで近い仕事をする人 |
|---|---|---|
| 家の顔 | お出迎え・お見送り、客室へのご挨拶、常連のお客様とのやりとり | 支配人、フロント、コンシェルジュ |
| 客室の責任者 | 仲居への指示、客室の整え、食事の段取り、お祝いの準備 | 客室部門やレストランの責任者 |
| 地域とのつなぎ役 | 女将の会や組合の集まり、地域の行事、宿の魅力の発信 | 営業や広報の担当者 |
ホテルでは、この仕事を部署ごとに分けて担当するのがふつうです。一方、家で営む旅館では、それをまとめて見られる人として女将が立っている、と考えると分かりやすいです。
旅館とホテルの違いそのものは、旅館とホテルの違いで法律の決まりから紹介しています。
女将は女性でなければいけない?男性や女将のいない宿も
『女将は女の人と決まっているの?男性はなれないの?』と疑問に思いますよね。結論から言うと、女将を置かなければいけない決まりはありません。
旅館業法は、営業の許可や宿泊者名簿などについて定めた法律です。条文の中に「女将」という役職は出てきません。
- 家の女主人や若女将が、お客様の前で接客をまとめる
- 常連のお客様が女将に会うのを楽しみにしていることも
- 宿の雰囲気や方針が、女将を通して伝わりやすい
- 社長や支配人が、宿の顔としてお客様を迎える
- 接客のまとめ役を、役職として分担している
- 宿の大きさや経営の形に合わせた、ひとつの選び方
表の右側も、宿の形として正当な選び方です。どちらが良いではなく、宿の大きさや家の方針で決まるものなんですね。
経営と接客を分ける宿も増えている
観光庁の検討会資料では、これからの方向として「所有と経営の分離」や、後継者を計画的に育てることが挙げられています。担い手として、女性・高齢者・外国人を含めた多様な人材の確保にも触れています。
ですから、女将が経営者を兼ねる宿もあれば、経営は社長、接客は女将と分ける宿もあります。女将と社長の役割分担は女将と旅館経営で紹介しています。
業界団体にも「女将」の表彰がある
日本旅館協会には、会員・従業員・女将に対する各種の表彰制度があります。女将は法律の役職ではありませんが、業界の中で大切な立場として認められているんです。
旅館の女将についてよくある相談
ここでは、旅館の女将について多く寄せられている疑問を、要約して答えてみます。
- 旅館の支配人が女性の「女将」なのはなぜ?
- 女将さんが客室に入る時、正座して手をつくのはなぜ?
- 地方の旅館では、年齢を重ねた女将さんが多いのはなぜ?
旅館の支配人が女将なのはなぜ?
「ホテルなら支配人なのに、旅館はどうして女性の女将なの?」という相談です。
女将は家で営む宿の女主人が接客をまとめてきた立場なので、支配人とは成り立ちが違います。大きな旅館では、支配人と女将の両方がいて、支配人が運営を、女将が接客をまとめるという分け方もあります。
客室に入る時に正座して手をつくのはなぜ?
「女将さんが部屋に入る時、正座して深く頭を下げるのが不思議」という相談もあります。これは座ったままで行う礼、つまり座礼です。
和室ではお客様も畳に座っています。目線の高さを合わせて座って礼をする、と考えると分かりやすいです。礼法の解説では、襖の開け閉めを座って行う時は、つま先を立てた跪座(きざ)の姿勢で行うとされています。

お辞儀や座礼の形は女将のお辞儀と座礼で紹介しています。
年齢を重ねた女将さんが多いのはなぜ?
女将は家業の宿で、次の代に譲るまで長く務めることが多い立場です。若女将として学んだ年月を経て女将になるので、経験を重ねた人が表に立っていることが多いんですね。
一方で、若いうちに家業に入って若女将として働く人もいます。年齢ではなく、宿の代替わりのタイミングで決まることが多い、と考えてみてください。
女将がいる旅館で働くことに興味が出たら
『女将さんの仕事、ちょっと気になってきたかも』という方もいるかもしれません。女将の多くは家業の宿で生まれますが、旅館で働きながら接客を学ぶ道もあります。
求人で「女将」という肩書きを見かけても、宿によって任される範囲はさまざまです。応募する前に、仕事内容や任される役割を確かめておきましょう。
まずは仲居やフロントとして旅館の仕事を経験してみる、という始め方もあります。探し方はハローワークや求人サイト、宿の公式サイトの募集などいろいろです。
宿泊業界の求人を扱う転職支援サービスに相談してみる方法もあります。
おもてなしHR(PR)
旅館・ホテルの仕事を探すなら、宿泊業界専門の転職支援に相談
おもてなしHRは、ホテル・旅館などの宿泊業界の求人専門の転職支援サービスです。専任のキャリアアドバイザーが、経験の有無や希望職種を問わず、書類作成や面接の日程調整、条件面の相談まで無料でサポートします。
無料おもてなしHRの公式サイトを見るサービスの内容は公式サイトでご確認ください。
女将になるまでの道のりは女将になるにはで紹介しています。
よくある質問
旅館に女将がいるのはなぜですか?
多くの旅館が家業として受け継がれ、その家の女主人が接客をまとめてきたからです。法律で決まった役職ではなく、宿の営み方から生まれた立場です。
日本旅館の女将とホテルの支配人は同じですか?
同じではありません。支配人は営業全体を取りしきる人を指し、女将は家の女主人として接客をまとめてきた立場です。両方がいる旅館もあります。
男性は女将になれないのですか?
女将は女主人を指す言葉なので、男性が女将と呼ばれることはほとんどありません。ただ、男性の社長や支配人が宿の顔としてお客様を迎える旅館もあります。
女将がいない旅館もありますか?
あります。女将を置く決まりはないので、宿の大きさや経営の形に合わせて、社長や支配人が接客をまとめる宿もあります。
まとめ
- 旅館に女将がいるのは、家で営む宿の女主人が接客をまとめてきたから
- 今も家業として受け継ぐ旅館が多いので、女将という立場が残っている
- 女将の役割は「家の顔」「客室の責任者」「地域とのつなぎ役」に分けられる
- 女将を置く法律上の決まりはなく、女将のいない宿や男性が表に立つ宿もある





コメント