女将の語源と由来|なぜ旅館の女主人を「おかみ」と呼ぶのか

女将の語源と由来を紹介する記事のアイキャッチ。和室の文机に置かれた和綴じの本と筆

当サイトの記事は編集部が公的機関の情報や辞書、公表されている統計などの公開情報を調べて独自に執筆しています。記事内に転職支援サービスへの案内(広告)を含みます。

旅館の女主人をなぜ「おかみ」と呼ぶのか、ふと気になったことはありませんか。『女将って、そもそもどこから来た言葉なの?』と調べ始めると、いろいろな説が出てきて迷いますよね。

結論から言うと、女将の由来は「御上(おかみ)」という言葉です。辞書では、御上の意味のひとつが旅館などの女主人で、その意味の時に「女将とも書く」とされています。

この記事では、辞書に書かれている範囲で、女将の語源と「おかみさん」という呼び名の由来をたどっていきます。

目次

女将の語源は「御上(おかみ)」という言葉

先に結論

「おかみ」は、もともと御上と書く言葉です。国語辞典では、御上の意味として天皇の敬称から他人の妻まで5つが並び、そのうち女主人の意味の時に「女将」の字が使われます。

『おかみって、お上(かみ)のおかみ?』と思った方、その感覚はかなり当たっています。国語辞典の「おかみ」の見出しは、漢字で「御上」です。

御上には、いくつもの意味があります。辞書の並びを表にしてみました。

辞書の番号御上の意味女将との関係
1天皇の敬称直接の関係はない
2朝廷・幕府や政府など、政治を行う機関。為政者「お上のお達し」の「お上」はこれ
3旅館・料理屋・居酒屋などの女主人この意味の時に「女将とも書く」
4他人の妻。おかみさん「御内儀」「内儀」とも書く
5主君・主人の敬称直接の関係はない
御上の5つの意味のうち、女主人の意味の時に女将と書くことを示した図解

ご覧のとおり、御上はもともと「上に立つ人」を敬って呼ぶ言葉として、いろいろな相手に使われてきたんです。

女主人の意味には「大お上」「若お上」も

御上の3の意味には、用例として「大お上」「若お上」が載っています。今の大女将・若女将という呼び方は、ここにつながっているんですね。

同じ項目の補足には、大きな宿では経営者の一族の女性が女将になり、主に接客をまとめる職名にもなっている、とも書かれています。

「御上」は「おうえ」と読むこともある

大きな国語辞典には、御上を「おうえ」と読む見出しもあります。こちらは、主人や目上の人の妻を敬って呼ぶ言葉と説明されています。「おかみ」とは別の見出しとして載っています。

「おかみ」はどう女主人の呼び名になった?時代順に見る

辞書の記載を時代順に並べると、流れが見えてくる

辞書を見ると、江戸時代には家の妻を敬う呼び方が使われ、明治の初めには女主人の意味の「女将」の用例が出てきます。ただ、言葉が移り変わった道すじそのものを書いた辞書はありません。

『結局、いつから旅館の女主人をおかみと呼ぶようになったの?』という疑問、気になりますよね。はっきり何年からと書いた辞書は見つかりませんでした。

そこで、辞書や事典に書かれている用例や説明を、時代の順に並べてみました。ここから見えるのは「流れのヒント」で、確かな歴史の年表ではない点だけ心に留めておいてください。

時代辞書・事典に書かれていること
江戸時代の前期(上方)他人の妻を、相手の家の身分によって「おくさま」「おいえさま」「ないぎ」「おかさま」と呼び分けていた
江戸時代「内儀」は特に町家の妻を敬って呼ぶ言葉。商家では使用人のかしらを「番頭」と呼んだ
江戸時代以降料理屋などで客の接待をする女性を「仲居」と呼ぶようになった
かつて「おかみさん」は商人・職人の妻に使われた
1859年「女主人」という言葉の用例がある
1874年から1876年ごろ客商売の家の女主人という意味の「女将」の用例がある
明治時代「旅館」という言葉が、高級な宿の意味で使われ始めた。ふつうの呼び名は「宿屋」
昭和「旅館」という言葉が広く使われるようになった
今大きな宿では経営者の一族の女性が女将になり、接客をまとめる職名にもなっている
辞書や事典の記載を時代順に並べ、おかみが女主人の呼び名として使われるまでの流れを示した図解

表から読み取れること

町家や商家では、家の妻が「内儀」「おかみさん」と呼ばれていました。お店の奥を預かる女性を、敬って呼ぶ言葉があったわけです。

明治の初めには、料理屋や旅館の女主人を指す「女将」の用例が見られます。客商売の家の女主人を「おかみ」と呼ぶ使い方は、このころには文章にも出ていたことが分かります。

宿の呼び名や、宿で働く人の呼び名も変わってきた

実は、「旅館」という言葉も昔からあったわけではありません。事典によると、旅館は中国から伝わった言葉で、明治時代に高級な宿の意味で使われ始めました。

明治のころのふつうの呼び名は「宿屋」で、旅館が広く使われるようになったのは昭和になってからだそうです。

仲居も、古くは「中居」と書かれ、主人に仕える人たちの控室を指していたと事典にあります。宿や店の言葉は、時代とともに少しずつ意味を変えてきたんですね。

「〇〇が語源」という断定には気をつけたい

ネット上には、女将の語源についていろいろな説が書かれています。辞書で確かめられるのは「御上と書き、女将とも書く」という関係までなので、それ以上の話は説のひとつとして読むのがおすすめです。

「女将」という漢字はどこから来たの?

「女将」の2文字には、もともと別の意味がある

漢字の辞典では「女将」は「女将軍」、大きな国語辞典では「じょしょう」と読んで「女の大将」が第一の意味です。旅館の女主人の意味は、その次に載っています。

『おかみなのに、なんで「将」の字なの?』と感じる方も多いはずです。実は、「女将」という2文字の組み合わせそのものは、辞書では「女将軍」「女の大将」の意味で先に載っているんです。

大きな国語辞典の「じょしょう」の項目では、第二の意味が「料理屋・旅館・待合など客商売の家の女主人」です。読みとしては「おかみ」「にょしょう」も添えられています。

読み辞書での意味
じょしょう1. 女の大将 2. 客商売の家の女主人
にょしょう料亭・旅館などの女主人
おかみ御上と書き、女主人の意味の時に「女将」とも書く

なぜこの字を当てたのかは分かっていない

「おかみ」という言葉に、いつ・なぜ「女将」の字を当てるようになったのか。調べた辞書には、その経緯は書かれていませんでした。

ですから、「女の大将だから女将と書く」と言い切ることはできません。分かっているのは、女将という字が女主人の意味でも使われ、それが「おかみ」と読まれている、ということです。

読み方について

「女将」を「おかみ」と読む理由や、若女将・大女将の読み方は女将の読み方でまとめています。

女将さん・おかみさんの由来

「おかみさん」は、もともと商人や職人の妻を呼ぶ言葉

国語辞典では、御上の意味のひとつに「他人の妻をいう。おかみさん」があり、かつては商人・職人の妻に用いたと書かれています。旅館の女将さんという呼び方は、この使い方とも重なっています。

女将さんの由来を探ると、旅館より先に「家の妻」の呼び方に行き着きます。和英辞典でも、おかみさんは「お上さん」「お内儀さん」「御上さん」「御内儀さん」とも書くとされています。

同じ辞書には、もとは敬った言い方で、かな書きが多い親しみをこめた表現、という説明がついています。お店の奥さんに「おかみさん」と声をかけるのは、この流れなんですね。

家の妻としての「おかみさん」
  • 他人の妻を指す言葉
  • かつては商人・職人の妻に使われた
  • 御内儀・内儀とも書く
女主人としての「女将さん」
  • 旅館・料理屋・居酒屋などの女主人
  • 宿の顔として接客をまとめる
  • 女将とも書く

例えば、なじみの小料理屋でこんなやりとりを聞いたことはありませんか。

「おかみさん、ごちそうさまでした」

「ありがとうございます。また寄ってくださいね」

ここでの「おかみさん」は、お店の女主人への親しみをこめた呼びかけです。家の妻への呼び方と、女主人への呼び方が、今の会話の中で自然に重なっているんです。

相撲部屋の「おかみさん」も同じ流れ

相撲部屋では、師匠の夫人を「おかみさん」と呼びます。部屋のお金の管理や後援者とのつきあい、力士たちの母親役も務めると紹介されています。

家と商いを奥で支える女性を、敬いと親しみをこめて呼ぶ。そんな使い方が、今もいろいろな場所に残っているんです。くわしくは相撲部屋のおかみさんで紹介しています。

女将さんとおかみさんの呼び分けや失礼にならない使い方は、女将さんとは?を読んでみてください。

女将の由来についてよくある相談

質問サイトにも、女将の語源や呼び方の由来についての質問が寄せられています。閲覧の多いものから3つを選んでお答えしますね。

相談1:女将さんをどうして「おかみ」さんと呼ぶの?語源はどこ?

女将さんを「おかみさん」と呼ぶ理由と、言葉の出どころを知りたい、という相談です。

語源は「御上」という言葉です。国語辞典では、御上の意味のひとつに旅館などの女主人があり、その意味の時に「女将とも書く」とされています。

「女将」の字を見てから読み方を考えると不思議に感じますが、言葉の「おかみ」が先にあると考えると、すっきりしますよ。

相談2:妻、女房、家内、奥様、かみさん…。妻の呼び方にはどんな由来がある?

男性から見た妻の呼び方がたくさんあるけれど、それぞれどこから来たのか、という相談です。

この記事で扱える範囲でお答えすると、「かみさん」「おかみさん」は御上の「他人の妻」の意味につながっています。かつては商人・職人の妻に使われたと、国語辞典に書かれています。

また、江戸時代の前期の上方では、相手の家の身分によって妻の呼び方を変えていたという記載もあります。

呼び方辞書にある使い分け
おくさま上流の武家や豪商など、身分のいちばん高い家
おいえさま中流以上の家
ないぎ中流の家
おかさまそれ以下の家

ほかの呼び方の由来は、この記事では調べきれていないので、気になる方は国語辞典で引いてみてください。

相談3:大女将・大旦那・大先生のように、先代に「大」をつける言葉はほかにもある?

先代や先々代を呼ぶ時に「大」をつける言葉を知りたい、という相談です。

女将については、国語辞典の御上の項目に、用例として「大お上」と「若お上」が載っています。先代を「大」、次の代を「若」で呼び分ける形ですね。

今の旅館で「大女将」「女将」「若女将」と呼び分けるのも、この用例とつながっています。大女将の役割は大女将とは?で紹介しています。

由来を知ると見えてくる、今の女将の姿

「奥を預かる人」から「宿の顔」へ

もとは家の奥を預かる女性への呼び方だった「おかみ」が、今では宿の接客をまとめる職名にもなっています。言葉の由来を知ると、女将という仕事の重みも感じられますよね。

辞書の補足にあるとおり、大きな宿では、女将は接客をまとめる職名としても使われています。一方で今は、女将という役職を置かない宿や、男性の経営者がお客様の前に立つ宿もあります。

女将の形は、宿の大きさや方針でいろいろなんです。女将が今どんな役割を担っているかは、女将とは?意味と読み方、旅館で女将が担う役割で紹介しています。

『由来を調べていたら、女将の仕事そのものに興味がわいてきた』という方もいるかもしれません。女将の仕事に興味が出て、まず旅館で働いてみたくなった時は、宿泊業界の求人を扱う相談先を使ってみるのもひとつの方法です。

おもてなしHR(PR)

旅館・ホテルの仕事を探すなら、宿泊業界専門の転職支援に相談

おもてなしHRは、ホテル・旅館などの宿泊業界の求人専門の転職支援サービスです。専任のキャリアアドバイザーが、経験の有無や希望職種を問わず、書類作成や面接の日程調整、条件面の相談まで無料でサポートします。

無料おもてなしHRの公式サイトを見る

サービスの内容は公式サイトでご確認ください。

言葉の由来から、もう一歩知りたい時
  • 女将・若女将・大女将の違いを調べる
  • 旅館の女将が1日にしていることを知る
  • 女将の言い換えや類語を知る

女将の言い換えや、女主人・内儀・ママとの違いは女将の言い換え・類語でまとめています。

よくある質問

女将の語源は何ですか?

「御上(おかみ)」という言葉です。国語辞典では、御上の意味のひとつに旅館・料理屋などの女主人があり、その意味の時に「女将とも書く」とされています。

女将さんの由来は何ですか?

国語辞典では、御上の意味に「他人の妻。おかみさん」があり、かつては商人・職人の妻に使われたとされています。親しみをこめた呼び方として、旅館や店の女主人にも使われています。

なぜ「女将」という漢字を書くのですか?

「女将」の2文字は、辞書では「女将軍」「女の大将」の意味でも載っています。ただ、「おかみ」になぜこの字を当てたのかの経緯は、辞書には書かれていません。

女将という言葉はいつごろからありますか?

大きな国語辞典には、客商売の家の女主人という意味の「女将」の用例として、1874年から1876年ごろの文章が挙げられています。

まとめ

この記事の要点
  • 女将の由来は「御上(おかみ)」で、女主人の意味の時に「女将とも書く」
  • 御上には、天皇の敬称から他人の妻まで5つの意味がある
  • 「おかみさん」は、かつて商人・職人の妻に使われた呼び方
  • 「女将」の2文字は、辞書では「女の大将」「女将軍」の意味でも載る
  • なぜ女将の字を当てたのかの経緯は、辞書には書かれていない
女将ガイド

女将ガイド 編集部

旅館の女将・若女将の仕事と役割、女将になるまでの道のり、着物や立ち居振る舞い、旅館のしきたりとおもてなし、旅館・料亭で働く方法までを、やさしく整理している情報サイトです。 公式サイト

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次