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着物で働く宿に入ることになって、『毎朝、自分で着物を着られるかな』と不安になっていませんか。最初は時間もかかるし、仕事中に崩れないかも心配ですよね。
結論から言うと、着物の着付けは「下準備・長襦袢・着物・帯・仕上げ」の5段階に分けると覚えやすくなります。毎日くり返すうちに、手が順番を覚えていくんです。
この記事では、着物を自分で着る手順と、仕事中に着崩れやすい所の直し方が分かります。
着物を自分で着付けるには?まず5段階の流れをつかむ
着付けは、5つの段階を順番に進めるだけです。一つひとつの段階で「ここだけは押さえる」という所を決めておくと、毎朝の着付けが安定します。
女将の着付けといっても、特別な技があるわけではありません。宿の女将や仲居さんも、最初は先輩に教わりながら、毎朝の着付けで少しずつ慣れていくんです。
まずは、着付けの手順を5段階に分けた全体の流れを見てみましょう。

| 段階 | すること | 押さえたい所 |
|---|---|---|
| 1. 下準備 | 着物・帯・小物を並べ、肌着を着る | 小物を使う順に並べておく |
| 2. 長襦袢 | 長襦袢を着て、衿を合わせる | 衿元の形をここで決める |
| 3. 着物 | 着物を羽織り、裾と前を合わせて腰紐を締める | 裾の長さと前の重なり |
| 4. 帯 | 帯を巻いて結ぶ | 帯の高さと結び目の安定 |
| 5. 仕上げ | しわを整え、鏡で前後を確かめる | 背中と衿元のしわ |
『5段階もあるの?』と思った方もいるかもしれません。でも、慣れてくると一つの流れとして体が動くようになりますよ。
仕事の着付けとお出かけの着付けの違い
仕事で着る着物は、何時間も動き続けても崩れないことが大事です。お出かけの着付けより、腰紐や伊達締めをしっかり締めて、動いてもずれにくくするのが基本になります。
着付けの国家検定である着付け技能士は、他人に着物を着付ける仕事を対象にしています。自分で着る「自装」とは別のものです。人に着付ける力を確かめたい方は、女将に役立つ資格も見てみてください。
着付けの前に用意するもの
着付けの途中で小物を探すと、そこで手が止まって崩れやすくなります。使う順に並べておくだけで、着付けはぐっと楽になるんです。
着付けに使う小物は、名前が多くて最初は戸惑いますよね。まずは何に使うものかを知っておきましょう。
| 小物 | どこで使う | 役目 |
|---|---|---|
| 肌着・裾よけ | いちばん下 | 汗を吸い、着物を汚れから守る |
| 長襦袢 | 肌着の上 | 着物の下に着る下着。衿元の形をつくる |
| 半衿 | 長襦袢の衿 | 衿元の汚れを防ぎ、飾りにもなる |
| 衿芯 | 半衿の中 | 衿をきれいに立たせる |
| 腰紐 | 長襦袢と着物 | 裾の長さや前の重なりを留める |
| 伊達締め | 長襦袢と着物 | 胸まわりを押さえて崩れを防ぐ |
| 帯板 | 帯の前 | 帯の前にしわが寄らないようにする |
| 帯枕・帯揚げ・帯締め | 帯 | お太鼓の形をつくり、留める |
| 足袋 | 足 | 和装の時にはく袋状のはきもの |
半衿は、辞書では長襦袢の衿に汚れを防ぐことと飾りを兼ねてかける衿と説明されています。毎日着る仕事着では、汚れやすい所なので替えを用意しておくと安心です。
足袋は最初にはいておく
足袋は、こはぜという留め具で留めるはきものです。日本大百科全書では、こはぜは1から7枚で、普通は3から4枚とされています。
着物を着た後にかがんで足袋をはくと、せっかく整えた裾や帯が崩れてしまいます。足袋は、肌着を着たらすぐにはいておくのがおすすめです。
- 着物と長襦袢を広げ、しわがないか見ておく
- 長襦袢に半衿と衿芯をつけておく
- 腰紐・伊達締め・帯板などを使う順に並べる
- 足袋を先にはいておく
- 髪をまとめ終えておく
前の晩と当日の朝にしておくこと
朝の支度の時間は限られていますよね。前の晩にできることを済ませておくと、当日の着付けに集中できます。
| いつ | しておくこと | ねらい |
|---|---|---|
| 前の晩 | 翌日の着物と帯を決め、衣桁に掛けておく | 朝に迷う時間をなくす |
| 前の晩 | 半衿の汚れを見て、必要なら付け替える | 衿元を清潔に保つ |
| 前の晩 | 小物を使う順に、ひとまとめにしておく | 途中で探さずにすむ |
| 当日の朝 | 髪をまとめ、足袋をはく | 着物を着てからかがまない |
| 当日の朝 | 肌着と補正をすませる | 帯を結んだ後の崩れを減らす |
『朝はぎりぎりまで寝ていたい』というのが本音ですよね。前の晩のひと手間で、朝の着付けはずいぶん落ち着いてできるようになりますよ。
髪は着物を着る前にまとめておくと、衿元を汚さずにすみます。和装に合う髪のまとめ方は女将の髪型で紹介しています。
長襦袢と着物を着る手順
着物の衿元の形は、長襦袢を着た時点でほぼ決まります。長襦袢の段階で丁寧に整えておくと、着物を重ねた時にきれいに収まるんです。
長襦袢の着方
まずは肌着の上に長襦袢を着ます。体型によっては、腰まわりにタオルを当てて補正をすると、帯が落ち着きやすくなります。
- 長襦袢を羽織り、背中の縫い目を体の中心に合わせる
- 衿を後ろに引いて、首の後ろに少しすき間をつくる(衣紋を抜く)
- 自分から見て右側の衿を下に、左側の衿を上に重ねて衿を合わせる
- 胸の下で腰紐を締め、背中のしわを脇へ寄せる
- 伊達締めを重ねて締め、衿元を押さえる
衣紋をどのくらい抜くかは、宿の雰囲気や年代によって好みが分かれます。先輩の着姿を見て、宿でなじむ形に合わせてみてください。
着物の着方
長襦袢が整ったら、いよいよ着物です。着物は裾の長さと前の重なりを決めるところがいちばん大事なんです。
- 着物を羽織り、長襦袢の袖を着物の袖に通す
- 背中の縫い目を体の中心に合わせ、裾の長さを決める
- 上に重ねる側(上前)の幅を決めてから、下になる側(下前)を体に沿わせる
- 上前を重ねて、腰骨のあたりで腰紐を締める
- 身八つ口から手を入れ、おはしょりを整える
- 長襦袢の衿に着物の衿を重ね、胸紐や伊達締めで押さえる
裾の長さは、仕事の内容によって変えることもあります。配膳や階段の上り下りが多い宿では、少し短めにする人もいますよ。
衿を逆に合わせてしまうことです。着物は、自分から見て左側の衽を上に重ねる「右前」が通常の着方です。反対の「左前」は死者の装束に用いるとされているので、鏡に映すと左右が逆に見える点に気をつけてみてください。
『鏡を見ると、どっちが上か分からなくなる』という方も多いはずです。迷った時は「右手がすっと懐に入る方が正しい」と覚えておくと確かめやすいですよ。
浴衣の着付けから練習するのもひとつの方法
いきなり長襦袢と着物で練習するのは、ハードルが高いと感じる方もいるはずです。そんな時は、浴衣から始めてみるのもいいですよ。
日本大百科全書では、浴衣は肌襦袢を用いず素肌に着て、女性は半幅帯を締めるとされています。長襦袢がないぶん手順が少なく、前の合わせ方や腰紐の締め方を覚えるのに向いているんです。
| 練習の段階 | 着るもの | 覚えられること |
|---|---|---|
| はじめ | 浴衣と半幅帯 | 右前の合わせ方、腰紐の位置 |
| 次に | 長襦袢と小紋 | 衿合わせ、おはしょりの整え方 |
| 慣れたら | 着物と名古屋帯 | お太鼓結び、仕上げの整え方 |
帯を結んで仕上げる手順
帯が下がると、着姿全体がだらしなく見えてしまいます。帯の高さをそろえて、結び目をしっかり留めることを意識してみてください。
帯の結び方はいくつもありますが、まず覚えたいのはお太鼓結びです。百科事典マイペディアでは、お太鼓は年齢や未婚既婚を問わず最も一般的な結び方とされています。
お太鼓結びの流れ
名古屋帯は、お太鼓の部分を並幅にし、ほかの部分を半幅に仕立てた帯です。もともと衣服を簡単にする目的で考えられた帯なので、ふだんのお太鼓を結ぶのに使いやすいんです。
- 帯板をつけ、手先を肩にかけて胴に帯を巻く
- 巻いた帯をしっかり締めて、仮に留める
- 帯枕をたれの裏に当て、背中にのせて紐を前で結ぶ
- 帯揚げで帯枕を包み、前で仮に結ぶ
- たれでお太鼓の形をつくり、手先を中に通す
- 帯締めを締めて、お太鼓を留める
帯の種類や、袋帯と名古屋帯の違いは帯の種類と結び方で詳しく紹介しています。
仕上げで見る所
帯が結べたら、最後に全体を整えます。ここを丁寧にするかどうかで、一日の着崩れ方が変わってきます。

- 背中のしわを脇へ寄せて、帯の下に収める
- 帯揚げを帯の中に入れ、見える量をそろえる
- 衿元が左右同じ形になっているか見る
- 後ろ姿を合わせ鏡で見て、お太鼓が曲がっていないか確かめる
- 裾の長さが前と後ろでそろっているか見る
『後ろ姿まで見る余裕がない』という朝もありますよね。そんな時は、出勤してから先輩に後ろを見てもらうのも一つの方法です。
仕事中に着崩れやすい所と直し方
旅館の仕事は、正座からの立ち上がりや、かがんでの配膳など、着物が崩れやすい動きが多いです。崩れやすい所を知っておけば、その場で直せます。
どれだけ丁寧に着ても、何時間も動けば多少は崩れてきます。大事なのは、崩れた時にさっと直せることなんです。
仕事の中で着崩れやすい所と、直し方を並べてみました。
| 崩れやすい所 | 起こりやすい場面 | その場でできる直し方 |
|---|---|---|
| 衿元が開く | 腕を上げる、かがんで配膳する | 身八つ口から手を入れ、下前の衿を引く |
| おはしょりがたるむ | 正座からの立ち上がり | おはしょりの下を軽く引いて整える |
| 裾が下がる | 長時間の立ち仕事、階段 | 腰紐の上の布を少し引き上げる |
| 帯が下がる | 座ったり立ったりをくり返す | 帯の下から両手で押し上げる |
| 帯揚げが出てくる | 前かがみの動き | 指で帯の中に入れ直す |
| 袖がはみ出す | 物を取る、片付ける | 長襦袢の袖を着物の袖の中に戻す |

着崩れを防ぐ動き方
着崩れは、直すより防ぐ方が楽ですよね。動き方を少し変えるだけで、崩れ方はかなり違ってきます。
- 高い所の物は、袖口を片手で押さえて取る
- かがむ時は、膝を曲げて腰を落とす
- 階段は、上前を少しつまんで上る
- 腕を大きく上げて物を取る
- 腰から前に折って、かがみ込む
- 裾を気にせず大股で歩く
例えば、配膳中に先輩からこんな声をかけられることもあります。
「衿が少し開いてきたよ。廊下に出たら直しておいてね」
「ありがとうございます。すぐ整えてきます」
着崩れを指摘された時の返し方も、覚えておくと気持ちが楽になります。
| 場面 | 返し方の例 |
|---|---|
| 先輩に衿元を指摘された | 「ありがとうございます。廊下で直してきます」 |
| 自分で直せない所がある | 「後ろの帯が下がっていないか、見ていただけますか」 |
| 直し方が分からない | 「この崩れ方は、どう直すのがいいでしょうか」 |
お客様の前で直すのは避けて、廊下や控えの場所で整えるのが基本です。着物での動き方は着物の所作と立ち居振る舞いでも紹介しています。
一日の流れで見る、着崩れを確かめたいタイミング
着崩れは、一日の中でも崩れやすい時間帯があります。仕事の区切りごとに鏡を見るくせをつけておくと、大きく崩れる前に直せますよ。
| 仕事の区切り | 崩れやすい所 | 確かめたいこと |
|---|---|---|
| 朝のお見送りの前 | 衿元 | 朝食の片付けで開いていないか |
| 客室の準備の後 | 裾、おはしょり | かがむ動きで下がっていないか |
| 夕方のお出迎えの前 | 帯、帯揚げ | 座ったり立ったりで下がっていないか |
| 夕食の配膳の合間 | 袖、衿元 | 腕を伸ばす動きで乱れていないか |
| 夜のご挨拶の前 | 全体 | 合わせ鏡で後ろ姿を見ておく |
『そんなに何度も鏡を見る時間はない』と思いますよね。全部でなくても、お出迎えとご挨拶の前だけ確かめるようにするだけで、お客様からの見え方は変わってきます。
旅館の中には、昼の仕事と夜の仕事の間に休憩をはさむ働き方の宿もあります。その間に一度帯を解いて着直すと、夜の仕事をすっきりした着姿で迎えられます。
一日着た後のひと手間
仕事を終えたら、着物はすぐにたたまず、しばらく掛けて湿気を飛ばしておく方法があります。汚れやしわに早めに気づけるので、翌朝の着付けも楽になります。
着物のしまい方や手入れは着物の手入れと保管を参考にしてみてください。
着付けに慣れてくると、着物で接客する仕事そのものに興味がわく方もいるはずです。旅館やホテルで働いてみたいと思った時は、宿泊業界の求人を相談できる窓口を使う方法もあります。
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ハローワークや宿の公式サイトの募集から探す方法もあります。着付けを教えてもらえるかどうかは、応募の前に確かめておくと安心ですよ。
よくある相談:自分で着て結婚式へ、着付けの習い方
知恵袋には、自分で着付けることへの不安や、着付けの習い方の相談が多く寄せられています。迷いやすいポイントを、相談ごとに見ていきましょう。
相談1:自分で着付けて結婚式に行くのはマナー違反?
着物や帯の格は合っているけれど、自分で着付けて結婚式に行くのは失礼にならないか、という相談です。
自分で着付けること自体が、マナー違反になるわけではありません。大切なのは、着物と帯の格が場に合っているか、着姿が整っているかです。
不安な時は、家族に後ろ姿を見てもらったり、式場の控室で鏡を確かめたりしておくと安心ですよ。着物の格は訪問着・付け下げ・色無地・小紋の違いで紹介しています。
- 着物と帯の格が、出かける場に合っているか
- 衿元が左右同じ形で、半衿の見え方がそろっているか
- お太鼓が曲がらず、帯の高さが落ち着いているか
- 裾の長さが前と後ろでそろっているか
- 直し用に、腰紐や安全ピンなどを小さな袋に入れて持ったか
出先で崩れた時のために、直す場所の見当をつけておくのも安心につながります。お手洗いの鏡の前など、落ち着いて直せる場所を先に確かめておくといいですよ。
相談2:着付け教室に通うか、独学で覚えるか
自分で着物を着られるようになりたいけれど、教室に通うのがいいのか迷っている、という相談です。
教室には、手の動かし方をその場で直してもらえるよさがあります。独学は、自分のペースで何度も練習できるのがよさです。
| 覚え方 | 向いている人 |
|---|---|
| 着付け教室に通う | 最初の形を、人に直してもらいながら覚えたい人 |
| 宿で先輩に教わる | 仕事で毎日着るので、宿の着方に合わせたい人 |
| 本や動画で独学する | 自分のペースで、何度もくり返し練習したい人 |
旅館で働くなら、宿の先輩に教わりながら毎日着るのがいちばんの練習になることも多いです。
相談3:実家の旅館を手伝い、毎日着物を着るようになった
実家の旅館を本格的に手伝うようになり、毎日着物を着ている中での悩みの相談です。
毎日着るようになると、最初は時間がかかって焦りますよね。でも、同じ手順を毎朝くり返すうちに、着付けの時間は自然と短くなっていきます。
着崩れしやすい所をメモしておき、女将や先輩に直し方を聞いてみてください。宿ならではの着方のコツを教えてもらえることもありますよ。
例えば、こんなふうに聞いてみるのはどうでしょう。
「夕食の配膳の後、いつも衿元が開いてしまうんです。何か工夫はありますか」
「伊達締めを少しきつめにして、腕を上げる時に袖口を押さえてみて」
家族だからこそ聞きにくいこともありますよね。でも、毎日着ている人の工夫は、本や教室では分からないことも多いんです。
よくある質問
着物の着付けは、自分でどのくらいでできるようになりますか?
覚えるまでの期間は人によって違います。旅館の仕事で毎日着る場合は、くり返すうちに手順が体に入っていきます。最初は時間に余裕を持って準備してみてください。
着付けの手順で、いちばん大事なのはどこですか?
長襦袢の衿合わせと、着物の裾と前の重なりを決めるところです。ここが整うと、帯を結んでからも崩れにくくなります。
女将の着付けは、普通の着付けと違いますか?
手順の基本は同じです。仕事で長い時間動くので、腰紐や伊達締めをしっかり締めて、崩れにくく着るのが特徴です。宿によって衣紋の抜き方や裾の長さの好みもあります。
着崩れした時、お客様の前で直してもいいですか?
お客様の前で直すのは避けて、廊下や控えの場所で整えるのが基本です。崩れやすい所を知っておくと、さっと直せるようになります。
着付けの練習は、何から始めればいいですか?
長襦袢と着物でいきなり始めるより、浴衣と半幅帯から練習すると手順が少なくて覚えやすいです。右前の合わせ方や腰紐の位置に慣れてから、長襦袢と着物に進んでみてください。
まとめ
- 着付けは下準備・長襦袢・着物・帯・仕上げの5段階で覚える
- 衿元の形は長襦袢を着た時点でほぼ決まる
- 着物は自分から見て左側の衽を上に重ねる右前で着る
- 帯はまずお太鼓結びを覚え、名古屋帯で練習すると結びやすい
- 着崩れは廊下や控えの場所で、その場で直せるようにしておく





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